徘徊とは、認知症の高齢者によくみられるもので、一見目的なく歩き回る行動。
しかしながら、本人にとっては意味ある行動であることも珍しくなく、「親族の家に行く」「畑の見回りに行く」「仕事に行く」など、過去・現在の思考に基づいて行われていることも多くあります。
しかしながら、時間帯がおかしい、既に仕事や親族は失っているなどから、他の人にとっては不可思議な行動に映ります。
ときにそのまま行方不明になってしまうこともあり、認知症ないしは認知症の疑いによる行方不明者は年間1万5,000人を上回っています(平成28年における行方不明者の状況│警視庁)。
1.認知症による徘徊への対応
認知症によって徘徊が始まったら、まず理由を聞くようにします。自分が今いる場所がわからなくなってしまっていてトイレを探しているようならば、「トイレに行きましょうか」と案内をします。
もしも介護者の家に引き取った後、「自分の家ではない」というのであればまだ環境に馴染んでいないことが徘徊の理由と推測されます。そのストレスを解消するため「一旦お茶でも飲んで落ち着いてから出かけましょうか」など気をそらすことで落ち着いてくれることがあります。
体力的に許す範囲で一緒に家事をする、一緒に散歩をするなどしてあげれば、自分の居場所を再確認したり、お世話をする人に馴染んでくれることでしょう。
2.徘徊と散歩の関係
徘徊は、一見「当てもなくうろうろすること」ですが、本人にとっては何かしらの目的がある行動です。その心の問題を簡単に止めることはできません。
徘徊で一番困るのは、介護者が疲れ眠りたい夜間に出て行かれることです。これを食い止めるためには、日中適度な運動をしてもらい、夜間しっかり眠ってもらうことです。
生活リズムを整えるためにも、要介護者本人の「出かけたい」という気持ちを満たすためにも、日中、一緒に散歩をするのもよいことです。
たとえ「自分の家に帰りたい」という名目で出かけようとしても、それを否定せず、「一緒に行きましょうか」と伝えて同行し、帰ってきたときには「お帰りなさい」と家に招き入れることで、少しずつ自宅がどこであるかを理解してくれるでしょう。
3.徘徊に備えてGPS装置を準備
どうしても徘徊が家の中だけで留まらない、夜間も家を出てしまうことが現れ始めたら、GPSなど位置情報を確認できるものを用意します。介護保険ではレンタルすることはできませんが、補助・貸し出しをしている市区町村があります。
ペンダント式のものも多くありますが、既に「自分がどこにいるか」を理解できないまでに認知症が進んだ方にとって、それを持って出ることはむずかしいものです。
これに対応しているのが、GPSを仕込んだ靴です。これを日頃から履いてもらうようにし、他の靴を履かないようかくしておけば、自然と位置がわかるようになります。
しかしながら、衣服にまで頓着しないような状態であれば、靴もはいてくれないかもしれません。そのようなときは、玄関や廊下に「人感センサー」をつけ、そこを通過したときにチャイムやブザーを鳴らすようにすることで、知らぬ間に家を出てしまうリスクを減らすことができます。
まとめ
徘徊は、介護をする方にとって体力・精神力を求められるもののひとつで、疲弊を招くものです。介護については、以下の4つを特に理解しておきましょう。
- 徘徊は、他の人にとって理解できない行動。しかし本人にはきちんとした理由がある
- 徘徊の理由を聞く。それをなだめる・気をそらす行動で落ち着いてくれることも
- 散歩をしてもらうことで生活リズムができたり、自宅を認識してもらえることがある
- 徘徊がひどくなったら、GPS装置を準備。靴タイプが取り入れやすい