立ち上がり介助とは、ベッドから車いすへ、車いすから自動車へなど、要介護者が一旦立ち上がらなければならないときに行う介助のこと。
人の体を支えることはとても難しいものです。特に要介護者が自身で姿勢を保てない場合、ほぼ「抱える」状態となりますので、適切な方法・介助用具を用いなければ共に転倒をしてしまう危険性があります。
介護施設や医療施設で行われている介護技術講習会などに参加し、日常生活に欠かせないテクニックを知り、身につける必要があります。
1.立ち上がり介助方法
ベッドから車いすへ移動する際の立ち上がり介助方法は以下の流れで行います。
- ベッドと車いすを30度ほどの角度にし、車椅子のブレーキをかけておく
- 車いすのフットサポート部を跳ね上げ、つまずきの原因を取り除いておく
- 要介護者の上半身を起こし、足をベッドから下げてもらう
- 少しずつベッドの端(車いす近く)に要介護者のお尻をずらしてゆく
- 要介護者の両足がきちんと床に付いているのを確認する
- 要介護者のわきの下に両腕を回す
- 要介護者にも介護者の肩に腕を回してもらう
- バランスを崩さぬよう、介護者は足を開き腰を落としてしっかり抱きかかえる
- 要介護者を前傾姿勢で受け止め、立ち上がってもらう
- 介護者は車椅子に近い足に軸足を移す
- 要介護者・介護者ともに方向転換する
- 要介護者に車いすのアーム部分をつかんでもらう
- ゆっくりと車いすにすわってもらう
- 介護者は車いす後方へ回り、要介護者のわきの下から腕を差し入れて引き上げ、しっかり座らせる
他に、自動車への移動、入浴椅子の利用時、トイレのときなどの立ち上がり介助方法があります。
2.立ち上がり介助用具
人の手を借りずとも、介助用具を使えば自身で立ち上がれる・歩ける方もいらっしゃいます。また、人の手を借りながら介助用具を使うことで、さらに安定した立ち上がりができる方もいらっしゃいます。
そのような方に用いられるのは、立ち上がり用介助用具です。
立ち上がり介助用具と呼ばれるものには、
- 廊下の手すり
- 床置き形の小さな手すり(座布団や布団の下に敷きこむ・部屋や廊下に直置きする)
- 玄関から廊下への段差に置く手すり
自身の腕や足の力がまだ残っている方には、これらを使ってもらうことで、自然と“リハビリ運動”もできます。また、支える方にかかる負担も減りますので、腰を痛めることも少なくなります。
これら手すりは、介護保険で設置・レンタルできることもありますので、まずはケアマネージャーへ相談します。
3.片麻痺の方の立ち上がり介助
しっかりと両足を床につけられる方ならば、立ち上がり介助もスムーズですが、片麻痺の方の場合、バランスを崩しやすいので注意が必要です。
大切なのは、片麻痺を起こしている患側(動かせない側)の取り扱いです。
- 患側の足を乗り移りに必要なだけ前に出す。つま先・かかとを下から支えるように
- 両足が揃ったことを確認する
- 健側(動かせる側)の手を車いすの遠いほうのアームに伸ばし掴んでもらう
- 前かがみになったことを確認し、介護者は腰を落とす
- 患側の腕を上から抱えて保護、手のひらで腰あたりをつかむ・支える
- 患側は膝がかくんと折れることがあるので、介護者と要介護者の膝をあわせ、膝折れを防止
- サポートの姿勢を保ちつつ、健側のわきの下に腕を回して支える
- 立ち上がるよう声をかけ、健側の足を軸にし回転
- 正しい位置まで回転できたら、介護者も一緒に車いすに座るようなつもりで腰を落とす
片麻痺の方は、バランスを崩しそのまま車いすのシートへ倒れこむように座ります。このとき骨折などしないよう、一緒に腰を落とし、ゆっくりと座ってもらうことが重要です。
まとめ
立ち上がり介助は、介護する方にとっては体力勝負、要介護者にとっては身を預ける不安が伴います。立ち上がり介助については、以下の4つを特に理解しておきましょう。
- 立ち上がり介助とは、要介護者が一旦立ち上がらなければならないときに行うもの
- 立ち上がり介助方法は、ベッドから車いす、車いすから自動車などケースにより異なる
- 立ち上がり介助用具は、基本的に手すりの形状をしている。介護保険でカバーできることも
- 片麻痺がある場合はバランスを崩しやすいことに注意。特に座らせるタイミングで骨折を起こしやすい