杖歩行とは、片麻痺や痛みなどで歩行が困難な人が杖を用い体重を支え、歩行すること。
健側(健康な側)で杖を持ち、患側(麻痺・ケガのある側)をかばう動作が必要ですので、慣れるまでは介助者が手伝いをしなければなりません。杖の握り方や杖のつき方、足の出し方などマスターできれば、ある程度自分で歩行することもできるようになります。
杖の種類もいくつかありますので、体の状態や身長に合ったものを選びます。体重を支えるポイントが1点の、比較的良く見るタイプのものの中には折りたたみ式もあります。
1.杖歩行の際の介助
要介護者が杖歩行に慣れるまでは、介護者の手伝いが必要です。杖歩行の介助の基本は次の点です。
- 杖の高さが本人に合っているかどうか=杖をついたとき、曲げたひじと体とが約30度になるものを
- 杖の先のゴム部分が擦り減っていないか=擦り減っていると、重心をかけられず滑ってしまう
- 介助する人は患側に=麻痺やケガで体重をかけられないため姿勢が崩れやすい
- 患側の手と脇を両手で支える=重心を健側にうまく乗せることができるようになるまで補助
- 杖と足を出す順序を確認する=杖・患側の足・健側の足の順でゆっくり歩く
患側の足は、歩行のとき「ちょっとだけつく」程度となりますので、最初から大きな歩幅では歩けません。介助する人は、患側の足の歩幅に合わせて同じペースで進みます。
2.杖歩行に対応する杖の種類
杖歩行に用いられる杖の種類は大まかに5種類あります。体の状態や歩く場所によって選びます。
- T字型杖=良く見かける1本の杖。足腰の弱り方が左右のバランスを欠いている人、片麻痺の人向け
- 前腕固定型杖(ロフストランドクラッチ)=握る部分と腕を包むパーツ2点が特徴。握力がない人向け
- 松葉杖=わきの下と握る部分で支えるのが特徴。片足で体重を支えられない下半身麻痺、筋力がない人向け
- 多脚型杖=T字型杖の先が3~4本のもの。股関節が変形している人、リウマチの人向け。平坦な場所でないと安定しない
- 肘支持型杖=通常握りの部分が横に伸び、前腕(ひじから先)を支えるようになっているのが特徴。手を自由に伸ばせない関節炎ないしはリウマチの人向け
3.杖歩行の注意点
杖歩行には、様々な危険が伴います。これらを避けるため、以下の点に注意を払います。
- 屋内の場合=床置きしているものや電気コードなど、杖をつく際に引っ掛けてしまいそうなものは可能な限り排除
- 朝の外出の場合=冬季は凍結、交通量の多い道は注意が必要です。介助者は車道側にいるようにする
- 大規模施設の場合=エスカレーターは使わず、エレベーターを利用する。もしもエスカレーターしか選択肢がない場合、サイドの板に寄りかからないようにする
杖歩行をしている人は、杖に体重をゆだねています。「もうひとつの足」として重要な働きをしている杖ですので、その杖が通りかかりの人に払われてしまうとそのまま転倒してしまいます。杖歩行をしている人を見かけたら、杖からできるだけ距離をあけてすばやく通過し、場所を開けてあげるのがベストです。
まとめ
杖歩行は、高齢者や障害を持つ人が可能な限り自力で移動するために必要な“スキル”です。それそのものがリハビリにもなりますので、積極的に利用したいものです。杖歩行に関しては、以下の4つを特に理解しておきましょう。
- 杖歩行とは、歩行が困難な人が残された機能を用いながら歩く方法のひとつ
- 杖歩行の介助は、杖の状態チェックや患側を支えること、同じペースで歩くことが基本
- 杖の種類は、おおまかに5つ。体の状態や、歩行する場所によって選択する
- 杖歩行は、障害物を除くこと、歩く道の状況を確認することが必要。杖歩行の人を見かけたらできるだけ遠くを歩き、転倒させないようにする