老後破産の原因と今からできる4つのこと

老後資金

「老後破産」という言葉が定着し始めている近年ですが、その言葉のイメージはとても暗く寂しいものです。そんな中、今現在もいわゆる老後(定年退職後の“第二の人生”)を迎えられる人たちは増え続けています。

老後破産とは何なのでしょうか。そしてそのような状態を避ける・解消するためには何をすべきなのでしょうか。

よりよい老後にするためのコツを解説します。

1.「老後破産」の意味と、その原因

老後破産とは、いかにも重苦しい印象の言葉です。老後といえば、それまで生活のために夫婦(もしくはひとり)で働き続けた期間を過去のものにし、自分もしくは夫婦ふたりのために使えるお金や時間が出てくる頃、というイメージがあります。

そのようなワクワクするはずの時期に、どうして老後破産などという苦悩が生じるようになってきたのでしょうか。

1-1.老後破産とは?老後破産状態に陥る理由は?

まず、「老後破産」の意味を知っておきましょう。老後破産という言葉には正しい定義はありませんが、リタイヤ後に生活が苦しくなってしまう現象のことを指しているものです。

2017年現在、70代となっている「団塊の世代(第一次ベビーブーム期に生まれた世代)」の方は、いわゆるバブル期を40代で経験していますので、ある程度の預貯金や年金を手にしているはずです。

それなのに老後破産という状態に陥るのには、次のような背景があります。個々人により事情は異なりますが、概ね以下のような傾向があります。

1-1-1.生活水準が高い

先にも触れたとおり、人生のうちで経済環境がとても良いバブル期を経験しています。そのため、現役時代からお金のかかる趣味をもっていたり、豪華な食生活が日常であったりと、高い生活水準のまま老後を迎えている方も少なくありません。

その頃の生活水準から抜け出せず、退職金を趣味などにつぎ込み続けていると、ある日「年金しか頼れるものがない」という状態に陥ってしまうことになります。

1-1-2.子の世代が「就職氷河期」だった

家庭によって差はあるものの、良い会社に入れるためには良い学校に、といった風潮が一般的になり、多額の教育費を払ってきたのもこの団塊の世代です。しかしながら、子の世代が直面したのは、就職氷河期でした。

そのため、就職が決まるまでの生活費を用意したり、場合によっては子がそのまま定職につかない(フリーター・無職)、派遣社員となったものの収入が不安定で「実家にべったり」といったケースも少なからずありました。

本来ならば、子は巣立ち、家計から切り離されるはずです。それまで捻出していた学費分を貯蓄に回そうという計画だった世帯では、そのプランが大きく狂ってしまったという話も多く聞かれます。

1-1-3.晩婚化が始まった時期

経済環境が右肩上がりであったバブル期は、たとえ男女間の賃金格差があったとはいえOLでも好きなものをいつでも買える状態でした。つまり、古い言葉で結婚を示すところの「ふたりでいれば何とか食べられる」「結婚すれば何とかなる」など、何の意味も持たなかったのです。

これにより、女性もキャリアアップのためにずっと働き続けたい、自由でいたいという気持ちを持ち始めたといえるでしょう。それもそのはず、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(通称・男女雇用機会均等法)」が施行されたタイミングなのです(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律│e-GOV)。

もちろん、それまでも晩婚化の動きはありましたが、バブル期(1980年代)にその傾向に拍車がかかったことはある調査でもわかっています(晩婚化を経済的に考える(図3)│関西学院大学)。特に男性では、折れ線グラフのライン上昇が目立ちます。

20代で自由を謳歌し、その後その人たちがひとたび結婚へと向かうと、30代で「結婚・出産・子育て・住宅ローン」という重荷を背負い始めます。それまでに貯蓄していたのならば別ですが、経済は右肩上がりと信じ華やかな暮らしをしていた一部の人にとって、バブル崩壊後の暮らしは辛いものだったはずです。

1-1-4.預貯金がない、それでも親の面倒をみなければならない

上記の理由のいずれかで預貯金がない状態でも、自らの親も年齢を重ねます。今ほど介護や福祉をサポートしてくれる制度は充実していませんでしたので、余程の財産家でない限り費用面で面倒をみる必要がありました。

ときにそれは、子どもの教育費・住宅ローンの支払いなどと重なりました。

2.現役世代の未来

では、今現在現役として働いている世代の方の老後はどうなるのでしょうか。2017年現在、リタイヤ前後世代である60代の平均貯蓄額は2,133万円となっています(平成26年全国消費実態調査~二人以上の世帯の家計収支及び貯蓄・負債に関する結果~(結果の概要)│総務省統計局)。

それに加え、転職せず1社で着々と働き続けてきた方ならば、それなりの退職金を得ることもできるでしょう。会社員として勤め上げた方のもうひとつの「おたのしみ」は、厚生年金で積み立てた年金です。

一方、会社員をやめ自営業者となった方は、国民年金のみです。厚生年金とは異なり、俗に言う「2階部分」「3階部分」がありません。(もちろん、ご自分で国民年金基金などの2階部分を積み立てた方は別です)

しかしながら、会社と折半の厚生年金と比較すると、国民年金+国民年金基金の払い込み金額は意外に重たく、国民年金のみ、という方もいらっしゃいます。この場合、40年間きちんと納めていても、2017年現在満額支給で月に64,941円(厚生年金ならば標準的な年金額は月に22万11,504円)ととても厳しい状況です(平成29年度の年金額改定についてお知らせします│厚生労働省)。

国民年金基金を活用する・民間保険契約でケガや病気にそなえる・少しずつでも貯金するという自衛行動を取る必要があります。

3.老後破産をしないためにチェックしておきたいこと

「自立したり結婚したりし、新しく世帯を構えた子に迷惑をかけたくない」。だれしもがそう思うはずです。自身の老後を支えてくれるのは、上でも触れたとおり、預金などの資産と年金です。

若い頃から老後のイメージを思い描き、考えられる危険性を排除していくことで、老後破産のリスク低減を計りましょう。

※老後に必要なお金については以下の記事でも解説していますので、ご参考になさってください。

3-1.若いときから少しずつでも貯蓄を

就職したての若年層であっても、小額ずつでもいいので積立など貯蓄を始めましょう。通帳の数字がどんどん積み上がっていくのを見ると、がぜんやる気も出てくるはずです。

ある程度まとまったお金ができれば、非課税が売り物のNISAをはじめとした投資もはじめることができますNISAとは?│金融庁)。積極的な資産運用も、元手となるお金がなければ何も始まりません。

手堅い預貯金をするもよし、遊ばせても良いお金で投資をするもよし、いずれにしてもまとまったお金を形成してゆくクセをつけることが一番です。

3-2.「ねんきん定期便」を確認する

2007年に“発覚”した年金記録問題をご記憶でしょうか。20歳以上の人がひとりにひとつ持っているはずの基礎年金番号ですが、手作業からオンライン化されたときに不備が生じていたことが大々的に明らかになったものです。

なぜか複数の年金番号を持っていたり、納付記録が残っていないケースがあったりと、本来受け取れるはずの年金額が不正確となってしまった人が発生してしまいました(年金記録問題とは?2│日本年金機構)。

この問題を解消しながら、年金の意義をより詳しく知ってもらうために、1年に1度の誕生月に「ねんきん定期便」が届きます。この内容をしっかり読み、もれている期間がないかを確認しましょう。

50歳未満の人には、これまでの加入期間とその実績に応じた年金額、50歳以上の人にはこれまでの加入期間と老齢年金の見込み額が記されています。これらの情報をきちんと確認することも、老後破産の防衛行動といえます。

3-3.生活水準を見直してみる

入ってくるであろうお金を確保・確認したら、同時に出てゆくお金にも敏感にならなければなりません。毎月の支出です。

2017年現在、経済状況は少しずつ上向いてきてはいます。しかしながら、給与が上がった喜びのままに生活水準を上げてしまうことはおすすめできません。上でも触れたバブル期のとおり、景気のよさがいつまで続くかなどどこにも保証はないのです。

これまでがんばった分の「ごほうび」をあまりにも増やしてしまわないよう気をつけてください。その生活に慣れてしまうと、経済環境が悪化してしまったとき大きなストレスを抱えることとなってしまいます。

3-4.【重要】老後に必要なお金を把握しておく

何かを成し遂げようとするときには、まずはそのすがたをイメージすること、というのは定石です。これは老後の生活にもいえることですが、あなたの思い描く「老後の生活」はどのようなものでしょうか。

このとき、忘れてはならないポイントがふたつあります。

  • 60代はケガや病気、交際費がかさみやすくなる
  • 持ち家か賃貸住まいかで、支出が大きく変わる

国の統計で、老後のふたり住まいの平均支出額などを知ることもできますが、上記2点がどなたにも共通の「生活を左右するポイント」です。これに注意を払いながら計画を立てましょう。

実際、統計によれば、高齢者のふたり住まい世帯(無職)では、毎月約5万5,000円を預金の切り崩しなどでしのいでいることがわかります。やはり貯蓄は大切ですし、健康維持をかねて、体が動くうちは働くことも必要でしょう。

また、

  • 加入している民間保険を人生イベント(結婚・出産など)の際に見直し将来の不安に備える
  • モノの購入時には、分割払い(ローン)の利用を極力避ける
  • お金に関する勉強をする・定期的にファイナンシャルプランナーに相談してみる
  • 楽しみながら節約を試みる

などを実行するのも大切です。

※老後の生活費については、以下の記事もご参考になさってください。

 

4.老後破産の恐れがあるときにはどうする?

既にリタイヤし、年金生活者となった方が「これから先が不安」というときにどうすればよいのでしょうか。これから貯蓄を始めるには無理もあるでしょうし、不用意に食費を削ったりしてしまえば体調を崩す原因となります。

無理せず老後破産の可能性から逃れるためには、以下の方法を検討してみてください。

4-1.リバースモーゲージを利用する

持ち家があり、すでにローンを払い終えているのであれば、金融機関が取り扱う「リバースモーゲージ」を活用してはいかがでしょうか。

リバースモーゲージとは、持ち家に住みながらお金の借り入れができるものです。返済は月々ではなく、契約者の死亡時に家を売却することで一括返済するという仕組みです(リバースモーゲージ│三井住友銀行)。

家が担保ですからその家の状態などで借入額は変わってきますが、月々の返済がなくて済みますので、借り入れ後の生活を圧迫することはありません。

4-2. 長期生活支援資金貸付制度の利用

低所得であり、市町村民税非課税世帯で、賃借権・抵当権の設定がない家を持つ人が利用できるもうひとつの貸付制度が「長期生活支援資金貸付制度」です。市町村の社会福祉協議会が窓口となり、審査・貸付けをしてくれます。

貸付ですから利子が発生しますが、借入者が死亡するまでその家に住み続けられるというメリットがあります(生活福祉資金(長期生活支援資金貸付制度)の概要について│厚生労働省)。

4-3.どうしても必要な一時金用意のために「年金担保貸付」

少ない預貯金の中から、突発的に支出をしなければならないことも少なくはないでしょう。たとえばお祝い事や悲しみ事、家の補修などです。

このようなときは、年金を担保にお金を貸し付けてくれる「年金担保貸付事業」というものがあります。社会福祉の視点から、独立行政法人福祉医療機構のみが行えるものです。それ以外の業者が行うことは違法ですので、ご注意ください。

年金担保貸付事業は、お住まいの地域の金融機関が取り扱っていますので、相談してみてください。しかしながら、資金の用途には限りがあること、融資金額が受給年金額の0.8倍までであること、年金から国民健康保険税(後期高齢)が天引きされているときは自分で納めなくてはならなくなること、といった制約があります(年金担保貸付Q&A│独立行政法人福祉医療機構)。

借入を起こした後は、2カ月に1度の年金支給額から返済額を引いたものが口座に振り込まれ、年金手帳は窓口となってくれた金融機関に預けなければなりません。借入は返済額を考慮し、毎月の生活を圧迫しない範囲内にとどめるよう注意します。

4-4.市町村役所の窓口で相談する

老後破産状態になるには、医療費がかさんだ、高齢者を対象にした施設での入居費が高いなど、日常生活の中でそれなりの理由があるはずです。

もしも、浪費などではなく致し方ない理由だった場合、市町村役場の福祉関連窓口へ相談しましょう。生活保護や高額療養費制度、ケガや病気の程度によっては障害者控除対象者認定といったセーフティーネット(社会保障)を利用できるかもしれません。

4-5.「自己破産」「任意整理」をする

もしも実際に負債があり、それを支払いながら老後の生活を送ることが苦しくなった場合は、自己破産(法的手段で負債をなくす)・任意整理(債権者に一部の負債を減額してもらう交渉をする)ことが必要かもしれません。

そのような場合は、まず法テラスで実施している無料相談へ出かけてください。相談員が収入や返済額のバランスを見て、自己破産すべきかどうかある程度の判断をつけてくれます。

もしも自己破産ないしは任意整理が妥当、と思われるケースでは、お金の問題に強い弁護士を紹介してくれます。弁護士に支払う費用さえ厳しいときは、一旦法テラスが弁護士費用を立て替えてくれ、その後毎月5,000円ないしは10,000円ずつ法テラスに支払う「立替制度」を利用できるときがあります(STEP3.費用を立て替えてもらいたい│日本司法支援センター法テラス)。

「自己破産なんて恥ずかしい」と思わないでください。自己破産の事実は、国の広報紙である官報にしか掲載されません。その後何らかの理由で入用が発生してもお金を借りられなくなるというハンデを負うことにはなりますが、自ら誰かに告げることさえしなければ自己破産の事実は基本的に他の人に知られることはありません。

今、目の前にある生活を立て直すことを第一に考えてください。

まとめ

何の制約もなく人生を楽しめるタイミングとして熱望される“第二の人生”を、老後破産というかたちでふいにしないためには、若いときからのプランニングが必要です。

ここで覚えておいていただきたいことは次の5点です。

  1. 意外にも、過去に「良い時代(バブル期)」を経験した人が老後破産状態となることが多い。高い生活水準から抜けられないなどの理由から
  2. 現役世代は、今から老後のライフプランを立てる。厚生年金か国民年金か(収入)、生活費(支出)、預貯金はどうかなどの検討
  3. 若年層は今すぐにでも預貯金を始める。もしも給与が上がっても、上がった分は預貯金にまわすよう心がける
  4. お金に関する知識を蓄えるようにする。自分自身の知識だけでは不安な場合は、ファイナンシャルプランナーに相談をし、将来の見通しを立てる
  5. 「老後破産状態」となったときは、リバースモーゲージや長期生活支援資金貸付制度、年金担保貸付の利用を。それでも間に合わないときは、思い切って自己破産・任意整理を

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