年金生活を破綻させないために覚えておきたい5つのこと

今現在現役として働いている人にとって、「年金生活者」と聞くと、悠々自適なうらやましい世代と映るかもしれません。自分たちが年金を受け取る頃になると、いくらももらえないだろうと不安視している方が多いからです。

ですが、今、年金生活で不自由のない方でも、事と次第によってはいずれ問題が起こってしまうかもしれません。年金生活を経済的な面で健全な状態に保つため、チェックしておきたいことをご説明します。

1.支出面で無理をしないためのチェック項目

年金生活に入ると、概ねの方がリタイヤし、仕事から得られる収入がなくなっていることでしょう。そうとなれば、支出の面をいかにセーブするかが焦点となります。

※老後のお金にまつわるお話は、以下の記事もご参照ください。

老後の生活費はいくら必要?4つのケース別対応策

2017.06.14

1-1.住宅ローンの「一括返済」は充分に考えて

年金生活が苦しいものとなるのは、住宅ローンを一括返済してしまったことを発端とするケースが少なくないようです。確かに借金である住宅ローンですので、退職金やこれまでの貯蓄ですぐに返してしまいたくなる気持ちは誰もが理解するでしょう。

しかしながら、繰上げ一括返済が本格的に年金生活をスタートさせた後に大きな後悔となることがあります。預貯金や2カ月に一度受け取る年金額と一括返済額とのバランスにもよりますが、数百万円単位での返済ならば一括返済をやめておく方が良いこともあります。

住宅ローンを完済すれば、確かに月々の出費を抑制することができます。ですが、一方では、預貯金の大きな目減りで家のメンテナンス費にまで手が回らなくなる・いざというときの出費に耐えられなくなる状態に陥ってしまう可能性もあります。

これまでに貯めてきたお金や退職金を使い、住宅ローンの一括返済をするべきかどうかの判断は難しいかもしれません。年金生活で心がけるべきことを学ぶため、ファイナンシャルプランナーに「授業料」を支払ってでも相談すべきことのトップは、この住宅ローンの返済です。

1-2.クレジットカード使用が「当たり前」になっていないか

今やほとんどすべてのものに利用できる便利なクレジットカード。コンビニエンスストアで公共料金の支払いにまで使えますので、ついつい当たり前のように使ってはいないでしょうか。

クレジットカードの便利さは、手元にお金がなくても支払えてしまうだけではないことは、皆さんご存じの通りです。分割払いやリボルビング払い(リボ払い)などで、「何か今月は使いすぎたな」というシーンに対応してくれるからです。

しかしながら、分割払いやリボ払いには金利が付きます。特にリボ払いは借入した元本がなかなか減らず、いつまでたっても払い終えないという問題が発生してしまうこともあるのです。

契約したクレジットカードが「リボ払い専用」であることに気づかず、いつの間にか多重債務の原因になってしまっているケースも少なくありません。手元にあるカードの契約内容や借入している額を改めて確認し、年金生活を圧迫し始める前に「解約する」「支払い終える」などの手を打ちましょう(利用の前によく確認を!クレジットカードのリボルビング払い│独立行政法人国民生活センター)。

1-3.デビットカードへ変更する

借り入れ目的ではなく、単にクレジットカードの便利さを手放したくないだけなら、銀行の口座とセットになっているデビットカードの利用に切り替えるのもひとつの方法です。

デビットカードとは、クレジットカードのようにキャッシュレスで支払いができるもので、通常銀行口座と紐付けられています。お店でクレジットカードのように使えますが、支払った代金は銀行口座からすぐに引き落とされます。この仕組みにより、使用者も「使いすぎないか」と気にすることとなり、結果的に節約につながるというものです。

デビットカードの種類によって、携帯電話料金や保険料金の月払いに対応できないものもありますが、まちのお店やネットショップでは「ほとんどクレジットカード」のように使えますので、困ることはほとんどありません。

デビットカードをセットする口座は、年金を受け取る口座とは別にして「支出専用」とするとよりチェック機能が働きます。「今月は○万円まで」と限度を決め、デビットカードで支払う金額のみを入れておきます。予算を意識しながら買い物をするクセがつき、購入時に「本当にこれは必要なものなのだろうか」と立ち止まって考えることができるのではないでしょうか。

中には、スマートフォンで口座残高や、デビットカードの利用履歴、デビットカードの利用限度額の設定ができるアプリを公開している金融機関もありますので、ご自分の使い方に合ったものを1枚用意しておくとよいでしょう。

1-4.食費の推移をチェックする

もしも定年退職後に仕事をする予定がない場合、積極的な投資などを行っていない方ならば、収入は「年金のみ」ではないでしょうか。

現役時代のように、多忙からくる疲れで外食・中食(なかしょく・お弁当やお惣菜を買ってきて自宅で食べること)を多く利用する習慣そのままでは、食費がどんどんアップしてきます。また、加齢と共に、食は「量から質へ」と変化します。そのニーズに対応する外食・中食に多く頼ると、食費はさらにうなぎのぼりとなることでしょう。

せっかく自由な時間ができたのですから、庭があれば家庭菜園を楽しみ、丁寧な料理を作ることで、本来の食の楽しみを取り入れることをおすすめします。このような食事は、季節の移ろいを感じられると共に、体調の変化に合わせて減塩・糖質コントロールも可能で、健康を保つためにも有益です。

多忙な現役時代とは異なり、食事をゆっくりと楽しめるのもミドル・シニア世代のゆとりです。食の楽しみ方をシフトするだけで、「生活が苦しい」から、「楽しい」に切り替えることができます。

1-5.通信費にいくら費やしているかを確認する

65歳以上のシニア層でも手にしている方の多いスマートフォン。ご夫婦おふたりで月額いくら支払っているでしょうか。俗に言う三大キャリア(ドコモ・ソフトバンク・au)であれば、1台あたり5,000円~、おふたりで1万円~というケースがほとんどです。

それらは、3~5GBのデータ通信量が確保されているプランですが、実は約7割の方は「1カ月のデータ通信量は1GB未満」というアンケート結果があるのです(スマートフォンのデータ通信量と月額料金に関する調査│NTTコムオンライン・マーケティング・ソリューション株式会社)。これは、ムダな通信料金を支払っている可能性を示唆していますので、すぐにお店へ出向き、自分にあったプランへ変更することをおすすめします。

自宅にいることが多くなれば、自宅に引いているネット回線から家庭内無線LAN(Wi-Fi)を利用すればそのほとんどをまかなえるようになります。また、自分自身デジタル家電を得意としている、もしくは身近にそういう方がいらっしゃるのであれば、今話題となっている「格安SIM」へ変更することで、おふたりで月額5,000円程度(つまり半分)にすることも可能です。

今や生活に不可欠となったインターネット環境も、きちんと見直しすることでコストダウンすることができるのです。

2.年金生活者でも必要、保険料や住民税などの「非消費支出」

年金生活の要は、収入と支出のバランスです。しかしながら、現役時代と同じく、実際の収入=支出できる額ではありません。実際の収入から住民税や社会保険料などの「非消費支出」を差し引いたものが、支出できる額(可処分所得)です。

では、この非消費支出はどのように変化するのでしょうか。

2-1.国民健康保険料(税)

企業に勤めている間は、社会保険料(健康保険料)の金額が給与明細に記されていたはずです。会社名の入った保険証を手にし、いざというとき病院に持参していたのではないでしょうか。

退職したとき、この社会保険料(健康保険料)は国民健康保険料(税)に切り替えます。退職した日から14日以内に市町村の役所の国民健康保険課ないしは保険年金課(市町村によって呼び方が異なる)で手続きをします。

しかしながら、これまで会社と自分とで“折半”だった保険料が一気に自分ひとりにのしかかることとなり、家計の苦しさを感じる方もいらっしゃるでしょう。これまでご自分が加入していた健康保険の事務所に「任意継続ができないか」と問い合わせてみてください。

任意継続とは、これまで加入していた健康保険を、会社にいた頃とほぼ同等の金額で継続加入できる制度です。継続できるかどうか、継続できる期間中の条件はどうかなど、退職前に質問しておくと安心です。(退職後の健康保険について│全国健康保険協会)。

もしも、年金生活にはいってもこれまでの技術を活かして自営業を営む場合、それにマッチする団体に加入することも検討してみてください。自営業者(フリーランス)の団体をとりまとめている「文芸美術国民健康保険組合(略して文美)」というものがあるからです。もしもこれに加入できるならば、年収によっては国民健康保険料(税)よりも安く抑えることができるかもしれないのです(加盟団体一覧表│文芸美術国民健康保険組合)(保険料│文芸美術国民健康保険組合)。

どの方法を取るにせよ、どれが一番安くできるかを、会社の保険証を返上する前に調べておきましょう。

2-2.75歳以上の方は「後期高齢者医療制度」へ

リタイヤ後もどこかで働く方は社会保険料(健康保険料)を、働かない・働けない方は国民健康保険料(税)を支払いますが、75歳以上となった、もしくは一定の障害をおもちの方は65歳以上となったときに「後期高齢者医療制度」へ移行します。

保険料はお住まいの都道府県で異なりますが、基本的に「平均割額+所得割率」となっています(後期高齢者医療の保険料について│厚生労働省)。

2-3.住民税

年金生活者にとっての年金は、税法上では「雑所得」として扱われ、課税対象となります。よって、前年受け取った年金(複数箇所ある場合はその合計額)と、他の収入(給与所得・生命保険満期返戻金など)を合計した収入から計算された住民税を支払わなくてはなりません。

支払い、とはいっても、基本的に銀行口座に振り込まれる年金から自動的に引き落としされますので、あまり意識しなくてもよいでしょう。これを「特別徴収制度」といい、納税者や市区町村相互の手間を省くための仕組みです(平成21年10月より住民税の年金からの引き落としが始まります│総務省)。

注意しておきたいのは、「年金支給予定額と実際に口座に振り込まれた年金額が違う」と慌てないことです。また、独立行政法人福祉医療機構から年金を担保に借入を起こしている方は、特別徴収が行われません。住民税や先の後期高齢者医療制度保険料を、納付書を用いて支払う必要があります。

住民税の額は、お住まいの場所によります。愛知県あま市であれば、

  • 65歳以上=単身:年金収入148万円まで/夫婦:年金収入192万8千円まで
  • 65歳未満=単身:年金収入98万円まで/夫婦:147万円まで

ならば、住民税(市民税・県民税)はかかりません(市民税についてよくある質問│愛知県あま市)。

3.夫婦ふたりの年金額・預貯金での暮らしを「当然」としない工夫

老後、夫婦ふたりのゆったりとした時間を過ごすことに憧れを抱く方は少なくないものです。子を産み、育て、その子が巣立っていけば、家族の最小ユニットである“夫婦”に戻り、改めてふたりの暮らしが始まります。

しかし、残念なことに人間には寿命というものがあります。ご夫婦のうち、どちらかが亡くなってしまうと、年金受給額がダウンしてしまいます。

特に夫に先立たれた妻の場合、子育て中に専業主婦だった時期に厚生年金に加入できていないこともあり、夫の遺族厚生年金だけでは生活できなくなるケースがあります。

妻に先立たれた夫であってもほぼ同様です。妻が先に亡くなった場合、夫には遺族厚生年金はありません。

遺族基礎年金と遺族厚生年金の違い(川越市WEBサイトより)

今現在夫婦ふたりで受け取っている年金額や預貯金をあてにしたままの生活水準でいると、生活が苦しい状態が突然やってくるのです。どちらかに何かがあったとき、受け取れる年金額がどう変化するのか、調べておくことは大切です。できれば、そろそろリタイヤを意識し始める40代後半~50代前半には、

  • 自分(と妻)が受け取れる年金額
  • 夫が先立ってしまったとき、遺された妻が受け取れる年金額
  • 妻が先立ったとき、夫が受け取れる年金額
  • 繰上げ・繰り下げ受給した場合の、受け取れる年金額の違い

について、日本年金機構の窓口へ出向いて調べておくと、老後の生活をプランニングしやすくなります。

それでなくても、国の調査によると平均的な年金生活者(夫婦ふたり)は、預貯金を切り崩しながら生活をしています。いつまでもふたりで元気に暮らせる保証はどこにもありません。今からでも“節約モード”に切り替えて、いつ何時その日を迎えても不安を抱えないよう工夫しなければならないのです。

※いざというときの対策は、下記の記事でもご説明していますので、参考になさってください。

老後破産の原因と今からできる4つのこと

2017.07.01

まとめ

充実した老後を過ごすため、収入として欠かせない項目が「年金」です。年金生活を送る高齢者が経済面でも健康面でもより安心して日々を過ごすために、以下の5つを覚えておいていただきたいと思います。

  1. 退職後(早期退職含む)の住宅ローンの繰上げ一括支払いは良く考えてから。退職金などの預貯金を切り崩してまで行うべきか、ファイナンシャルプランナーに相談を
  2. クレジットカード利用には思わぬ落とし穴がある。ネットショッピングなどどうしてもカードが必要なら、銀行口座から直接引き落としをするデビットカードも利用できる
  3. 膨らみがちな通信費や食費を見直して。格安SIMで通信費を大幅削減、家庭菜園を楽しみながらじっくり調理ができれば食費はダウン、健康にも配慮できる
  4. 年金生活者でも、国民健康保険料(後期高齢者医療制度)や住民税などの「非消費支出」がある。年金から天引きされているので、届く書類に留意する
  5. 夫婦ふたりで受け取る年金額は、どちらかが先立ったとき減額される。今の年金額や預貯金を当たり前と考えず、無理のない範囲で節約する工夫を