親の介護は誰が見る?義務は誰にある?解決策5つ

在宅介護

親の介護は誰が見る?義務は誰にある?解決策5つ

親御さんに持病があるときは、「いずれは誰かが介護をしないとならないのだな」ということはイメージできますね。しかしながら、脳梗塞や脳卒中、心臓発作やケガなどをきっかけに、ある日突然介護生活が始まってしまうケースも珍しくはありません。

介護は、親御さんがご存命のうちはだれもが経験する問題です。介護にまつわるトラブルや費用のこと、介護生活が長期にわたるとき直面する壁など、事前に知っておきたいことはたくさんあります。

親御さんの介護のことが気になり始めたとき、「今すぐに読んでおいていただきたいこと」をご説明します。

1.親の介護は誰が見る?義務は誰にある?

数世代前の日本には、「長男が家を継ぎ、親をみる」という風習がありました。しかしながら、今は、学業や仕事のため地元を離れている方も少なくありません。ときにはきょうだい全員が親元(地元)にいない、というご家庭もあるでしょう。そのようなとき、何を指針に親の介護をすればスムーズなのでしょうか。

1-1.メインの介護者を決める

ご実家で一緒に住まわれている方は、成り行き上致し方なく「介護者」を引き受けることになってしまうケースがあります。これは要介護者の希望であることも多く、特に「他人の世話になりたくない」、「他の人と一緒の生活は難しそう」といった心理的な面が影響しています(世論調査「2在宅介護、施設介護に関する意識について」│内閣府大臣官房政府広報室)。

このような場合は、やはり一緒に住んでいる要介護者の配偶者や子供が介護者を引き受けざるを得ない状況です。要介護者が不安にならないよう、可能な限りメインの介護者を決めるとよいでしょう。しかしながら、介護者自身が仕事を持っていたり、子育て中ということもあります。他のきょうだいや親族が、仕事のペースを落とした分の介護者の生活費用を負担してあげる・子育てのサポートに回ってあげることが肝要です。

介護者は毎日、要介護者の面倒を見るだけで心も体も疲れきってしまいます。「なぜ私だけが」「収入も減っているのに」と不公平感をもってしまい、ある日突然揉め事が勃発、仲のよかった家族が分裂してしまうことも考えられるからです。

直接介護に携われない方は、費用負担という形で介護に参加してください。

1-2.要介護者の子、きょうだいで分担する

もしも、要介護者の子供が複数いて、ご実家の近隣に住んでいる場合は、できるだけ公平に分担するのがよいでしょう。それぞれの仕事や家庭に大きな支障が生じないよう、お互いに配慮しあうことが大切です。この場合もまた、事情によりお世話に参加できない方は、費用負担という役割を担ってあげてください。

1-3.介護は「女性がするもの」?

介護は「女性がするもの」?

過去の日本では、「男は外で仕事、女は家を守る」という暗黙のルールがありました。しかしながら、経済環境の問題で、夫婦共働きしながら女性が子育てをするご家庭がほとんどでしょう。そのようなとき介護の問題が持ち上がったら、当の女性(娘さん・お嫁さん)はパニックを起こしてしまうかもしれません。仕事・子育て・家事・介護と、担う仕事が多すぎるからです。

さて、日本全体の介護の現状を見てみましょう。平成24年に発表された統計では、調査時より過去の5年間に介護のため退職した人は48万7,000人、うち女性は38万9,000人です(平成24年就業構造基本調査結果の概要│総務省統計局)。介護のための退職は、8割が女性、ということになるのですが、裏を返せば2割の男性が介護のために仕事から離れているのです。

介護というのは、要介護者の状態によってはとても体力を要するものです。女性の役目としては重すぎるケースもあります。男性であっても介護のために「家に入る」方もいらっしゃる現状は、要介護者にとっても心強いことかもしれません。

しかし、収入の男女格差はいまだ解消されてはいません。男性が介護生活に入ることで、一家の収入が一気に落ちてしまう面も否めないでしょう。介護を見守る他のご家族や親族が、費用負担をしてあげることが必要です。

1-4.親の介護をする義務は?

「介護は誰がすべきか」という問題を、法的側面から見てみましょう。民法にはこうあります。

  • 民法第877条の1=直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
  • 民法第752条=夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

法的観点からすると、まずはご夫婦同士でお世話をしあう必要があります。しかし、要介護者の配偶者が高齢であったり、持病を持っている、要介護者の生活を支えるために働かなくてはならないこともあるでしょう。このときは、直系血族である子供たちが互いに協力しながら「家族」として親を支える必要があることが示されています。

とはいえ、核家族が当たり前となってしまった現代の日本において、子供たちが直接介護に当たることは難しいご家庭があるのも事実です。そのようなときは、「労力を費やす人」「費用をカバーする人」という形で役割分担をすることがあるべき姿かもしれません。

1-5.【要介護者がすべきこと】財産を把握し、家族への費用負担を減らす工夫を

【要介護者がすべきこと】財産を把握し、家族への費用負担を減らす工夫を

介護を受けるご本人が、近い将来起こるかもしれない家族の揉め事・確執を和らげるために行えることがあります。それは、ご自分の財産をきちんと把握し、介護にかかる費用を自らまかなえるかどうかを確認しておくことです。また、ご自身が亡くなった後にご家族間の確執を招かないよう、財産分割についてご存命中に家族と話し合いをしておきます。ご自身がまだ元気なうちに手立てを打つことが大切です。

意外なことに、遺産分割について裁判沙汰にまで発展してしまう「遺産の金額」は、

  • 1,000万円以下で1,655件(代理人選任51.8%)
  • 5,000万円以下で2,790件(代理人選任60.9%)
  • 1億円以下で811件(代理人選任75.3%)
  • 5億円以下で438件(代理人選任82.9%)
  • 5億円超で36件(代理人選任91.7%)

という割合なのです(【図表2-4】遺産分割事件の遺産額別の平均審理期間の分布と代理人選任率(資料3-2)│裁判所)。

遺産相続と聞くと、上流家庭などと呼ばれる「大金持ち」の問題と思われがちですが、決してそのようなものではないことがわかります。しかも、費用のかかる代理人(弁護士)をつけずに家族同士法廷で争うケースも多く、「決して多くはないお金を少しでも有利に受け取りたい」という、残された方々の悲哀が感じられるデータとなっています。

この背景には、恐らく「私がお父さんの介護をしたのに」、「一番楽をしていた長男・長女に多くのお金が行くのは許せない」などの心理的問題があるのでしょう。このような禍根を残さないためにも、介護を受ける方ご自身が、介護にかかる費用を貯蓄しておくことと、介護の状況に応じて誰に何を残すのかを自ら家族に切り出す心構えが必要、と読み取れます。

2.親の介護費用はどのくらいかかる?

「介護」と一口でいっても、要介護者の状態によってさまざまです。とはいえ、何となくでもイメージしておかなければ、必要なときに必要なもの(物品・サービス)が手に入りにくくなります。

ここでは、脳梗塞によって「要介護3」とされた方、男性・62歳「Aさん」のケースで見ていきましょう(実際にかかる介護費用はどれくらい?│公益財団法人生命保険文化センター)。要介護3とは、自分で立ち上がったり歩いたりすることができず、着替え・排泄・入浴など、ほとんど誰かに頼まなければできない状態です。

2-1.月間の平均介護費用はいくら?

月間の平均介護費用はいくら?

基本的に平日は奥さんが、土日は息子さんご家族が介護をしています。ウィークデーの奥さんの負担を減らすため、訪問介護とリハビリのためのデイケア、ショートステイを利用するプログラムをケアマネージャーとともに考えました。

  • 週1回の午前中に訪問介護=40,700円(8,140円×5回)
  • 月曜~金曜の日中1時間未満の訪問介護=85,360円(3,880円×22回)
  • デイケア=100,360円(7,720円×13回)
  • ショートステイ=25,650円(8,550円×3日)
  • 福祉用具貸与(車椅子・特殊寝台)=25,000円

ここまでで、月額利用額は277,070円です。

  • 要介護度別の支給限度額269,310円を引くと、7,760円となります。

これに

  • 支給限度額内サービス利用=26,931円
  • 超過分のサービス利用=7,760円
  • 介護保険対象外サービス利用=7,500円

を加えると

  • 自己負担額=42,191円

となります。

このように、「いざ介護」、となったとき、介護保険がどれほど大きな役割を果たしてくれるのかがわかります。

この金額であれば、2017年の年金支給額(厚生年金・夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額・平均標準報酬×40年間)である月額221,504万円(平成29年度の年金額改定についてお知らせします│厚生労働省)でまかなえる金額です。もちろん、さらに快適な介護行動のために必要な物品・機材・家のリフォームは自らの蓄えでカバーします。バリアフリーリフォームが初期費用として必要となることもありますが、自治体の補助金を利用することも検討します。

2-2.介護保険とは何?

上記のAさんの例では、本人の状態により「要介護3」とされました。

支援・介護の区分は

  • 要支援1=生活する中で一部の世話が必要。排泄・食事は自分でできる
  • 要支援2=生活する中で何らかの世話・部分的な介護が必要
  • 要介護1=着替えや掃除など生活の一部に手助けを求める。排泄・食事は自分でできる
  • 要介護2=身の回りのこと全般に助けが必要。排泄・食事にも手助けが必要で、ときに問題行動も
  • 要介護3=身の回りのこと全般がひとりでできない。歩行・排泄が自分でできず、ほとんどに介護を要する
  • 要介護4=身の回りのことや歩行もほぼ不可能で排泄にも手助けが必要。介護がないと生活ができず、問題行動も多い
  • 要介護5=ほぼ寝たきりで、自分のことがほぼできない

となります。

上記の各段階で必要な費用を「日本中のみんなで助け合いましょう」と定められたのが、介護保険です。

65歳以上であれば、原因が病気であれケガであれ、介護保険サービスを受けられます。40歳~64歳であれば、介護保険法で定められた特定疾病を要因として要介護となったとき、認定を受けることができれば介護保険サービスを受けることが可能です。

2-3.介護保険は誰がどの程度負担するものなの?

介護保険料は、40歳以上の人に支払いが求められています。「第1号保険料(65歳以上)」は市町村に、「第2号保険料(40歳~64歳)」は健康保険料と一緒に支払います。介護保険料は国に集められ、プールされています。

国に集まったお金は市町村に配分されますが、介護保険そのものの運営は市町村が行っています。その土地の65歳以上の人口がどのくらいかによって基準保険料が決まりますし、手にするお給料や年金によっても保険料が変化します。まさしく、国や地域を上げて要介護者を支える仕組みになっているのです(比べてみよう・わがまちの介護保険料│朝日新聞DIGITAL)。

たとえば、先に挙げたAさんの例を介護保険なしの全額負担とするならば、月額27万円以上かかるものですが、介護保険を利用することを認められば、42,191円で済むのです。介護保険のありがたさは、そのときになって感じるものかもしれません。

3.親の介護で困った時の解決策2つ

親の介護という問題に直面したとき、その程度によっては私たちの生活は一変してしまうことがあります。ときに「介護疲れ」という言葉が聞かれるように、介護とは、介護者の身体的・精神的パワーを奪ってしまうものですので、家族の協力を得てもなおつらいときは、介護サービスを活用することを検討してください。

3-1.各種介護サービスを積極的に利用

各種介護サービスを積極的に利用

上記、Aさんのケースで取り上げたように介護サービスにはいくつもの種類があります。

【自宅介護】

  • 訪問介護=ホームヘルパーの訪問により、食事・入浴・排泄・料理・洗濯などの援助
  • デイサービス=通所介護サービス事業所に出向き、入浴・食事・リハビリのケアを受ける
  • ショートステイ=介護者の病気などで家での介護が難しいとき、要介護者を一時的に老人ホームに預ける

このような支援を受けるためには、Aさんのように「要介護3」など、介護の必要性を客観的に判定してもらいます。この判定により、家族の状況や本人の意向、自宅の介護環境などを総合的に見て、必要なケアが何なのかを相談できるのが

  • ケアマネージャー=介護支援専門員。ケアプランの作成や、関係機関との仲立ちをしてくれる人員

です。

【入居型介護】

もしもご本人が「家族に迷惑をかけたくない」「体の麻痺などへの専門的なケアを積極的に受けたい」という意向をもっていたり、ご家族からの介護が受けられない状況にあるときは、施設への入居で介護を受けることになります。

3-2.自宅で介護をできないときは?

先に触れたように、介護サービスの種類は「自宅で受けるタイプ」と「施設に入ることで受けられるタイプ」に分かれます。もしも何らかの要因で自宅の介護ができない・難しいときは、以下のような施設を利用することになるでしょう。

【公的施設】

  • 特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護療養型医療施設・ケアハウス・養護老人ホーム

【民間施設】

  • 介護付有料老人ホーム・住宅型有料老人ホーム・健康型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅・グループホーム・シルバーハウジング

近年、よく目にするのが「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」です。要介護者が単身または配偶者とともに入居できる賃貸住宅という位置づけで、暮らしやすいよう施設内はバリアフリー、見守りやケアを行ってくれる専門家が在籍している施設です。高齢化に伴い入居型施設が不足気味となっていることを受け、2011年に許認可がスタートしました。

集合住宅に見守り・ケアが付いているものですので、生活支援の必要度が低い人向けです。「子供も全員巣立ったし、夫婦二人でどこかに部屋を借りたい」と願っても、高齢であることを理由に賃貸契約が結べないことも多くあり、このような方が安心して暮らせる場所としても用意されるようになりました。

もしも、元気なうちはご家族の支援を受けず、自分らしい暮らしを送りたいと思われている親御さんがいらっしゃるのであれば、このような施設があることをやんわりと伝えてみるのもよいでしょうサービス付き高齢者向け住宅│サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム)。

3-3.【重要!】要介護認定はどのように行われる?

介護保険を用いることで費用面の心配を抑制しながら介護にあたることができますが、このためには「要介護認定」の手順を踏まなくてはなりません。

どの程度介護が必要なのかは、個々人それぞれで異なります。たとえば、体は十分自由が効くのに認知症である方と、同じく認知症でありながら寝たきりになっている方とを比較した場合、徘徊の有無により介護の「量」は異なってきます。このように、一人ひとりの状況に合わせ、どのような介護が必要かを段階的に判定しなければならないのです(要介護認定はどのように行われるか│厚生労働省)。

親御さんやきょうだいなど、ご家族の体の問題で介護を意識し始めたときには、まずその方の居住地にある「高齢者支援センター」など介護サービスの窓口となっているところへ相談に行きます。生活支援行動へのアドバイスや、要介護認定申請の方法などを教えてくれます。要支援・要介護と認定されれば、これまでに挙げてきたようなサービスを介護保険を用いて利用することができます(介護サービスを利用するまでの申請事務の流れ│くまもと介護WEB)。

4.親の介護が大変!退職を考えるべき?

仕事をしながら介護をしなければならなくなったとき、あなたはどうされますか。もちろん介護の程度にもよりますが、要介護者の状態が重度のとき、「退職しなければ」と考えてしまうこともでてくるでしょう。しかしながら、「親の介護は9割逃げよ」というタイトルの書籍があるように、介護をする方の負担をできるだけ軽くする方法から考えなくてはなりません。収入や体力が奪われてしまうと、介護をする方も精神的・肉体的な面で追い込まれてしまいます。親子共倒れにならないよう、次のようなことから検討してみてください。

4-1.就業規則を確認

一度退職してしまうと、再度同等の収入を得るための転職は難しいものです。できれば介護を理由とした退職を避けるため、最初にすべきことは「就業規則の確認」です。子育てのための休業・休暇が広く認められはじめている現代、介護に関する休業・休暇について定めている会社もあります。中には、理由はどうあれ休職を認めている会社もあるでしょう。

4-2.上司に相談

上司に相談

介護は、介護をする方が亡くなるまで続くものではありません。そのうえ、要介護者の状態が深刻になればなるほど、在宅介護から施設への入所へと介護の形も変わっていきます。

気持ちは重くとも、是非上司に相談してください。介護は社会問題です。介護に理解ある上司で、なおかつ積極的にその社会問題に応えようとしている企業であれば、退職ではなく勤務時間の抑制などの対処法を示してくれるかもしれません。上司自身に介護の経験があれば、会社勤めをしながらの介護へアドバイスをくれることもあるでしょう。

4-3.早めに「介護貯蓄」を始め、介護と同時に行える仕事を探しておく

介護生活が始まると、初期費用として家のリフォームや介護に使用する品を購入するなどの大きな出費があることでしょう。そのとき、貯蓄がないとなると、一気に経済面で行き詰ってしまいます。

親の介護が視野に入ってきたら、すぐに貯蓄を始めましょう。もちろん、それまでに貯蓄があるのが一番です。また、どうしても退職しなければならなくなったときは、ハローワークを尋ね、失業保険受け取りの手続きをし、同時に自宅で行える仕事を探します。

幸いなことに、インターネットが普及し、それを利用した仕事が一般的となっている現在、在宅での仕事(リモートワーク)を推進している会社も少なくはありません。たとえ「要出社」であっても、介護に理解があり、これまでのスキルを活かせる会社がないか、根気強く探しましょう。

一部の求人情報は、ハローワークのWEBサイトで公開されています。手の空いた時間に少し覗いてみてはいかがでしょう(ハローワークインターネットサービス│厚生労働省職業安定局)。

まとめ

親の介護についてとても重要なことをお伝えしてきました。このページでは以下の5つのことを覚えておきましょう。

  1. 介護は「家族全員」で行うもの。きょうだいで役割分担をすることはもちろん、親自身も自ら考え禍根を残さないように
  2. 要支援・要介護と認められれば、介護保険で介護にかかる費用をカバーしてもらえる。具体的な内容はケアマネージャーと検討する
  3. 在宅介護が難しくなれば、施設への入所も検討。まだ元気なうちでも賃貸住宅のように入居できる「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」がある
  4. 「介護が必要になるかも」と思ったら、「高齢者支援センター」など介護サービスの窓口となっているところへ相談。認定に関すること、介護へのアドバイスをもらえる
  5.  介護がつらくなってきたとき、すぐに退職するのではなく就業規則の確認・上司への相談を。休職でも追いつかないときは、自宅でできる仕事を探す
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