老後の海外移住へ向けてチェックしたい6ポイントとは?

「老後は海外に移住して、リゾート感覚の生活を送りたい」と希望される方も少なくありません。確かにこれまでの日常生活から解き放たれた海外生活は魅力的ですし、国によっては手にする年金額を有利に“活用”できる可能性もあります。

しかしながら、海外での暮らしは生活しなれた日本とは勝手が違うのも事実です。夢見る老後、海外移住の現実はどのようなものでしょうか。考えられるメリットとデメリット、移住前にチェックしておかなければならないことなど、老後の海外移住についてご説明いたします。

1.ランキング上位の国の「言葉・医療の問題」

移住生活を送るためには、現地の言葉で不自由しないことが求められます。また、老後の大きな問題である医療の面で日本と同等の水準の治療がうけられるかどうかも重要な側面です。老後の海外移住に際し、しばしば人気の国として取り上げられる5つの国について事前に知っておきたい「言葉のこと」と「医療の状況」、そして気をつけるべきことを以下に示します。

国名 言語 医療面 備考
マレーシア マレー語(一部英語も通じる) 都市部に住むなら問題なし 多民族国家、楽しみもあるが窃盗も少なくない
タイ タイ語(一部英語も通じる) 都市部に住むなら問題なし 日本の食材が手に入りやすい、麻薬犯罪が少なくない
カナダ 英語(フランス語) 都市部に住むなら問題なし 移住者が多い、医療システムの都合上手術が必要な場合数カ月待ちとなることも
フィリピン フィリピン語(英語) 都市部に住むなら問題なし 日本企業も多く日本人コミュニティが見つけやすい、凶悪犯罪やテロの危険性も
インドネシア インドネシア語(一部英語も通じる) 都市部に住むなら問題なし 日本人向け不動産業者あり、一方日本人を狙う詐欺事件が多い

いずれも医療面では都市部に住むことで問題はクリアできそうです。しかしながら、言葉の問題で詳細に説明をする・説明を受ける必要のある医療については都市部の私立病院に頼らざるを得なくなります。老後、いずれは直面する医療や介護の面のチェックを怠ると、移住(ないしは人生の選択そのもの)が失敗に終わることも考えられますので、充分検討しなければなりません。

2.ビザの種類について

海外で長期滞在をしようとすると、

  • 長期滞在ビザ
  • リタイヤメントビザ

を取得しなければなりません。移住前提であれば、リタイヤメントビザが理想的ですが、国によっては現地での不動産の取得や数百万円以上の資産保有の証明、その国の金融機関に数百万円以上の定期預金をする、家のことを世話してくれるメイドを雇わなければならないなど各種条件がついてきます。

リタイヤメントビザでなく長期滞在ビザ(90日有効)で日本とその国を行ったり来たりする方法も無いわけではありませんが、往復の飛行機代・日本の住まいの維持(家賃・固定資産税)を考えると、金銭的なメリットが薄れてしまうことも覚えておきたいところです。

では、リタイヤメントビザが有利かといえば、それでは現地で就労ができませんので、経済面で危機を迎えたときに働けないといった問題も生じてしまいます。

3.「お金や生活の問題」チェック項目6点

海外移住を考える際、最初に考えるのはお金のことでしょう。自分たちが暮らすための費用を希望通りカバーできるか、毎月手にする年金額で間に合うのか…。また、その国での「生活の安心・安全」も気になることです。この点に関しては、移住を検討している国を以下のポイントから調べてみてください。

3-1.物価

余裕ある暮らしを夢見て物価の安い国を選ぶ、という方法があります。ネパールならば月に4~5万円、タイやフィリピンならば月13~15万円あれば“優雅な暮らし”ができるとされていますが、上でも触れたとおり現地で大きな金額の預金をしなければならない、現地でメイドを雇わなければならない場合などを考え合わせると、必ずしも夢見る暮らしの実現ができるとは言いがたいケースもあります。

たとえ優雅な暮らしを考えていなくても、年齢が上がるにつれ現地の食生活に馴染むことは難しくなり、「やっぱり和食が一番」と考えてしまうこともあるでしょう。現地で高い和食食材を購入する・和食レストランに頼るとなれば、いやおうなしに高い水準の暮らしをせざるを得なくなります。

上記でタイ・フィリピンでは13~15万円で優雅な暮らしができるとしましたが、たとえば手にしている年金が厚生年金でなく国民年金なら満額受給(夫婦で約13万円)できていても余裕はありません。また、現地の物価が上がってしまう・レートの変化や両替手数料の問題もあることから、安易に「物価が安い=余裕ある暮らし」と考えるのは失敗の原因ともなりえます。

3-2.宗教・文化・言葉

島国「日本」では、近年でこそ海外からの就労者・学生が増え、インバウンド(海外からの観光客)も珍しくなくなったとはいえ、外国人と日常生活を共にしているという方は少ないものです。このような環境から、暮らしの場として海外のとある国を選ぶことにはトラブルが発生しやすいものです。

その土地の宗教や文化を理解していなければ、人との接し方や食べ物の面で肩身の狭い思いをしてしまうかもしれません。突然移住することは無いとは思いますが、何度も長期滞在をし、その土地の日本人会(日本人コミュニティ)との関係を築く下準備をしておく必要があるでしょう。

また、日常生活に困らない程度の語学力は必須です。また、オープンで誰とでも会話ができる性格であればなお安心です。何か行動を起こそうとする前に「信頼できる人に聞く」ことは、宗教的環境の異なる国での生活には欠かせないひと手間です。“郷に入れば郷に従え”といいますが、文化に馴染む柔軟性が必要です。

3-3.治安

たとえ月15万円で生活をしている「決して裕福とはいえない」方であっても、物価の安い国の人から見れば「お金持ち」です。実際、海外旅行で盗難やお金がらみの傷害事件に合う日本人も少なくないことからみても、移住しようと考える国の治安は重要な問題です。

外務省が公表している渡航・滞在に関する情報を確認しながら、移住先を検討してください(外務省海外安全ホームページ│外務省)。また、長期滞在(お試し移住)をする際は、旅行日程・滞在先・連絡先などを登録することで、何らかの事態が生じたときにメールで情報を受け取れるシステムもありますので、それを利用します(たびレジ│外務省)。

3-4.日本人コミュニティ

その国に日本人がどれだけいるか、は、移住後の老後生活にとってとても重要です。日本人が多ければ、日本人向けの食料品を取り扱うスーパーマーケットやレストランがあり、日本語でこれら施設で用を足すことができる可能性が高まります。

また、このような国であれば、既に確立された日本人会(日本人コミュニティ)があるはずですので、友人を作りやすく助かります。暮らしで困ったことが生じたらすぐに相談できますし、日本語が恋しくなったときにもありがたい存在となってくれます。

3-5.「病院・保険」と「終活」

老後の暮らしに欠かせないものの中に「病院」があります。特に持病がある方は、その治療に対応できる病院があるかを調べ、その病院から遠くないところに居を構える必要があります。日本語対応のできる病院であればなおさら安心です。

海外へ移住すると、国民健康保険を抜け、移住先の健康保険に加入することになります。加入は国により条件が異なりますので、医療面での安心をより重視したい方は健康保険についても慎重に調べる必要があります。

また、移住先に“骨をうずめる”覚悟を決めきれないときは、飛行機や船での帰国に耐えられる体力のあるうちに日本に戻る必要があります。老後の海外移住は、「暮らし方」だけでなく、いわゆる「終活」についても考えておく必要があります。

3-6.気候と空気

比較的温暖な日本から、暑い国・寒い国へ移住することは、身体的負担が大きいものです。いくら元気な方でも体調を崩すきっかけにならないとも限りません。旅行であれば快適なホテルや商業施設にいればしのげるところ、日常生活に欠かせない買い物で、少なくとも数日に1度外出しなければならなくなることを考えると気候についても吟味しなければなりません。

また、物価が安いとされる国は、えてして“発展途上”にあることも少なくありません。光化学スモッグ(光化学オキシダントともいう)やPM2.5などの大気汚染についても事前調査をしましょう。老後の悠々自適な生活を求めて海外移住したにもかかわらず、気候や空気の問題で健康を害しては意味がありません。

4.海外に永住する人の数は増えている

外務省の発表では、

平成28年(2016年)10月1日現在の集計で、わが国の領土外に在留する邦人(日本人)の総数は、133万8,477人で、前年より2万1,399人(約1.6%)の増加となり、本統計を開始した昭和43年以降最多となりました。

このうち、「長期滞在者」(3か月以上の海外在留者のうち、海外での生活は一時的なもので、いずれわが国に戻るつもりの邦人)は87万49人(同1万55人(約1.2%)の増加)で在留邦人全体の約65%を占め、「永住者」(当該在留国等より永住権を認められており、生活の本拠をわが国から海外へ移した邦人)は46万8,428人(同1万1,344人(約2.5%)の増加)となっています。

とされています(海外在留邦人数調査統計〈平成29年要約版〉│外務省)。

また、その内訳は、

  • 米国=約32%(42万1,665人)
  • 中国=約10%(12万8,111人)
  • オーストラリア=約6.9%(9万2,637人)
  • タイ=約5.3%(7万337人)
  • カナダ=約5.2%(7万174人)
  • 英国=約4.9%(6万4,968人)
  • ブラジル=約4.0%(5万3,400人)
  • ドイツ=約3.3%(4万4,027人)
  • フランス=約3.1%(4万1,641人)
  • 韓国=約2.8%(3万8,045人)
  • シンガポール=約2.8%(3万7,504人)

の11カ国合計で、全体の約8割を占める結果となっています。

海外在留邦人数調査統計〈平成29年要約版〉│外務省

うち、永住者は、2016年(平成28年)に比べ、1万1,344人増加しているとしています。仕事の都合で海外の国に身を寄せるのではなく、永住するつもりで1万1,344人が日本から外に“流出”しているのは、近年の「老後の海外移住」ブームの影響を受けている可能性が透けてみえます。

5.税金で悩むことも

老後の海外移住には、ひとつの落とし穴があります。それは「税金」です。永住ではなく、いずれ日本に帰ってくることを決めていて持ち家をそのままにしておくのならば、固定資産税がかかります。その上移住先で家を購入したときは、移住先の国で課税されます。ダブルで税金を支払う結果となり、「考えているより出費が増えた」ということにもなりかねません。

また、日本の国民健康保険を使いたいなどの理由から、住民票をこれまでの住まいに残したまま海外に出ることを考えておられる方もいらっしゃるかもしれません。その場合は、国民保険料(税)や住民税が発生します。また住宅ローン中の家を賃貸にする場合、住宅ローン控除を使うことができませんし、賃貸物件として貸し出している最中の家の管理がしづらくなりますので、リスク含みとなります。

海外への移住は、暮らしぶりから税金のことまで「一から勉強」が欠かせません。同じ生活費用で少しリッチな暮らしを、と願っていても、意外なところでの出費が生じることがあるからです。

6.何度か通ってみる費用は「必要経費」

上記で取り上げた注意点をクリアするため、気に入った国を何度か訪れて季節ごとの過ごしやすさをチェックしたり、その国に住む日本人の話を聞いてみることはとても大切です。何人かと会うことができれば、それぞれの体験談から得ることは大きいでしょう。

確かに通う費用は大きなものとなるでしょう。しかしながら、実際に移住してみて「失敗した」「後戻りできない」と感じるよりよいものではないでしょうか。ネットで得られる情報よりはるかにリアルな地元事情を知ることができるうえ、移住前に友人ができるというメリットがあります。

ネット検索で「フィリピン日本人会」など、特定の国の日本人会を探し、連絡を取ってみることをおすすめします。

まとめ

近年話題となっている老後の海外移住ですが、2カ月に1度の年金受給額で物価の安い国へ行く、というのもひとつの考え方として有効です。同時にリゾート気分を味わえるのならば、とても魅力的な老後生活となることでしょう。

とはいえ、そこは海外への移住です。日本国内とは勝手が違いますし、他の人との関係性や住環境など、じっくりと事前調査しなければならないことは多くあります。今回は流行中の「老後の海外移住」で注意しなければならないことをご説明しましたが、特にご記憶いただきたい5点は次の通りです。

  1. 老後の海外移住で人気なのはマレーシアやタイ、カナダなど5カ国。いずれも英語が通じやすいこと、都市部に住めば医療面でも問題が起こりにくいことが人気ポイント
  2. 利用できるのは「長期滞在ビザ」「リタイヤメントビザ」。それぞれの特徴を知り、どちらが自分にとって有利かを正しく判断することが必要
  3. 海外移住で気になるのが物価や治安、文化の違い。日本で1カ月約13万円で暮らす「低所得世帯」であっても、物価の安い国では「お金持ち」なので特に治安に注意
  4. 移住を考えている国で必要なのは「病院」「保険」「日本人コミュニティ」。いざというとき何に頼れるのか、事前に細かく調べておくことが重要
  5. 移住を希望する国が見つかったら、何度か長期滞在(90日)をしてみる。その地での生活を“擬似体験”できるほか、日本人の友人を作ってより深い知識を得られる