老後資金

老後の生活の幸福度を左右するのはお金?シミュレーション5パターン

「老後の生活」と聞くと、あなたはどのようなイメージを思い描くでしょうか。苦しいものですか。それとも、それなりに楽しそうな印象でしょうか。

人というもの、生きていく上で欠かせないものは数多くありますが、「お金」と「暮らし方のプラン」が大きなウエイトを占めます。言い換えれば、暮らし方を上手にデザインすることで、老後の生活がより楽しく、充実したものになるのです。

今回は、老後の生活を考える上で不可欠な要素や、老後の生活を迎えるにあたって備えるべきポイントについてご説明します。

1.2016年現在、みんなは老後の生活をどうまかなっていた?

まず、この図を見てください(家計の金融行動に関する世論調査(平成28年)│金融広報中央委員会「知るぽると」)。

平成28年(2016年) 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]│金融広報中央委員会「知るぽると」より

平成28年(2016年) 家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査]│金融広報中央委員会「知るぽると」より

リタイヤ後に年金に頼って暮らすことについての解答のトップは、2人以上の世帯では「ゆとりはないが、日常生活費程度はまかなえる(48%)」、単身世帯では「日常生活費程度もまかなうのが難しい(58.2%)」です。

ここから想像できるのは、

  • 2人以上の世帯は、2人分の年金・貯蓄によって生活費をまかなっている、もしくは家族で支えあっている
  • 単身の世帯は、1人分の年金もしくは貯蓄によって生活費をまかなっている

ということです。さらに、不足分を補う方法では、

  • こどもなどからの援助=2人以上の世帯では4.3%、単身世帯では1.6%
  • 公的援助=2人以上の世帯では4.7%、単身世帯では10.0%

と、単身世帯では、こどもではなく「公的援助」に頼る比率が高いということです。とても厳しい印象です。

2.老後の生活で困窮しないためには、「シミュレーション」が重要

上記の情報で理解できるように、老後の生活を左右するのは、「家族のあり・なし」も大きな要因です。しかしながら、すべての人が必ず結婚している・家族がいる訳ではありませんし、もしも結婚していても夫婦のうちどちらかが先に亡くなることもあります。また、現役時代に収めてきた年金の種類(厚生年金か、国民年金か)と、その収めた額によっても、年金支給が開始されたときの受給額が大きく変わります。

このため、個々人の条件に左右されない事柄をシミュレーションしておくことが重要です。

2-1.自分の暮らしに最低限必要な額を知っておく

今、まさに年金生活を送っている方、老後の生活が気になり始めている40代・50代の方に試していただきたいことがあります。それは、「自分の生活は最低限いくらあれば可能なのか」のチェックです。

生活するうえで欠かせないものは、以下のような項目です。

  • 住まいにかかる費用(家賃/住宅ローン/住宅ローンを払い終えていたらメンテナンス費)
  • 食費
  • 医療費(持病のある方・将来かかるかもしれない医療費は医療保険でカバー)
  • 水道光熱費(季節により変動があるので、過去1年分の情報を確保)
  • 被服費
  • 交際費
  • 通信費
  • 民間保険掛け金
  • 税金

これらのお金を、今一度見直してみましょう。たとえば、最低生活費が15万円だとわかれば、100万円の預金があれば6カ月強生活できる計算となり、その間は年金をあてにしなくても生活ができることがわかります。また、何らかの理由で早期退職をせざるを得なかったときも、手持ちの貯蓄でどれくらいの期間しのげるか、年金支給開始までもつのかも想定できます。

このように必須のお金をピックアップし、削れるものはないかを調べてみます。それでも、どうしても譲れないものは何なのかがはっきりすれば、節約しながら「楽しむところは楽しむ」というメリハリの効いた老後の生活ができます。

※老後の生活費(どのくらいの生活費が必要か・生活費の見直しをどうするか)に関しては、以下の記事も参考になさってください。

2-2.急な出費に備えるための方法を探す

たとえば、年金で何とか生活ができていても、冠婚葬祭(特にご夫婦の場合どちらかが他界されたときのお葬式代)や突然のケガ・病気など、まとまったお金が必要になることがあります。これまでに貯蓄したお金や掛けてきた生命保険・医療保険でカバーできればよいのですが、もしも難しいときはどうすればよいのでしょうか。

そのときは、以下の方法が使えないかどうかの情報を集めておくとよいでしょう。

  • 家・土地を売る(もしくは、リバースモーゲージを利用する)
  • 生命保険がいくら降りるか・医療保険がいくら降りるか改めて確認
  • 生命保険を担保にした借り入れ制度が利用できるか、利用できるならいくらまで借りられるのか
  • 年金を担保にした借り入れ
  • 国民健康保険の「葬祭費」がいくら出るのか(市町村により異なる)
  • 遺族基礎年金・遺族厚生年金(厚生年金)、遺族基礎年金・寡婦年金・死亡一時金(国民年金)がいくら受け取れるか
  • 預貯金の取り崩し

2-3.年金受給を遅らせる(繰り下げ受給)することも考えてみる

老後の生活で収入の柱となるのは年金ですが、もしも再雇用などで受給時期を遅らせることができれば、受給できる年金の額を増やすことができます。

老齢基礎年金の繰り下げ受給│日本年金機構

もしも、年金受給を70歳まで待つことができれば、本来受け取れる額の42%増となります。厚生労働省が2017年1月に発表した年金額の例(22万1,277円)ならば、繰り下げ受給にして70歳からの受給を受けるとすれば、31万4,213円となり、生活に大きな余裕ができます。

特に持病もなく健康な方なら、健康維持のためにも働いてみてはいかがでしょう。70歳からの年金額をアップできると同時に、受給開始までの生活費(ケースによっては預金も可)を自力でキープでき、「現役である」という自信も持てます。

就業や大家業などで他からの収入がある場合は、それらの収入と年金収入とを合算した金額に所得税・住民税・後期高齢者医療保険料・介護保険料がかかります。そもそも年金受給額が高めの方の場合、引かれる税金とのバランスを考えて繰り下げ受給をするかどうかを決めてください。

繰り下げ受給に関しては、お住まいの地域の日本年金機構で相談し、充分に考えて決定してください。

2-4.老後の生活で起こりうる「トラブル」を想定しておく

老後の生活といえば、「夫婦ふたりでゆっくりと」が代表的なイメージではないでしょうか。しかしながら、ときとして突然家族が増えてしまうことがあります。その例として

  • 親や親族の面倒を見なくてはならなくなった
  • 子が離婚をして孫を連れて戻ってきた

のような事が考えられます。

このようなとき、引越し代金・家具などの準備や介護用具の用意など「初期費用」が預金から出て行くことが考えられます。また、一緒に住むことになった家族が自分自身で生活費を準備できないとき、月々の出費も多くなってしまいます。

それに対応できるだけの貯蓄があればよいですが、難しい・破綻しそうだと感じたら自治体の福祉課など、対応してくれる窓口を探して相談をします。

相談するとき、メインの話題にすべきことは、「このままでは世帯主である私たちが破綻してしまいそうだ」ということです。親や親族の面倒を見ているのであれば、世帯合算から割り出される後期高齢者医療保険料などの軽減措置や利用できる福祉制度を、お子さんが孫を連れて戻ってきたのであれば、児童扶養手当や就業支援など、利用できそうな制度を教えてくれます。

これらの情報は、自動的に役所から届く種類のものではありません。こちらから出向き相談することで、それらの制度をはじめて知ることも多いものです。それを不親切と嘆かないでください。

世帯の事情は個々に異なります。色々な条件の組み合わせで制度の利用ができるものですので、「相談ありき」でことが進むのです。

2-5.生活水準を落とす覚悟を決め、他の「充足感」を見つける

「2-1.自分の暮らしに最低限必要な額を知っておく」でもお伝えしたように、自分の必要とする最低の生活額をはじき出します。そのうえで、さらに削ることができる部分がないかを探りましょう。

今既に年金を受け取りながら老後の生活をしている方は、バブル期もしくはバブル後の「今の若者が想像もできない“リッチな暮らし”」をしてきた方かもしれません。となれば、贅沢をしている気はなくとも、案外ハイレベルな生活をしている可能性があります。

たとえば、毎月万の単位のお金をかけて美容室に行く、家族や親族のイベントごとを盛大に行う、孫へのお年玉が10万円単位…。これらは、景気が右肩上がりの時代に当たり前に行っていたことかもしれませんが、時代は変わってしまいました。再就職しない、もしくは体の問題で仕事ができないともなれば、この習慣をずっと“引きずっていく”訳にはいきません。

「ここだけは絶対にはずせない」ということ以外、思い切って生活水準を落とす覚悟も必要です。その代わりに、自分のために使える時間は増えているはずですので、あなたの知識や経験を活かせるボランティアなどで心の充実を図ってみるのはいかがでしょうか。価値観のシフトです。

インターネットで「高齢者 ボランティア」と検索すると、自治体や各種NPOなどの募集を発見することができます。

もし可能なら、老人ホームなど高齢者向け施設でのボランティア活動に参加してみませんか。年齢を重ねることについて深く知ることができますので、ご自身の今後について考えるチャンスを得ることもできますし、もしも親御さんやご親族の介護に参加せざるを得なくなったときのための経験を積むこともできます。

自治体もしくはNPOの運営する「シルバー人材センター」などに登録しておくのもよいでしょう。アルバイトやパートのように週に何日も、というものではなく、単発の軽作業の仕事が見つかることがあります。このような仕事もまた、他の方に喜ばれるものです。

3.こころの充足感こそ、老後の生活には必要

若い頃には「欲しくて欲しくて仕方がなかった時間」「こころの余裕」が、そして若い人にはない「知識・経験」が老後の生活にはあります。これらはどれだけの大金を積んでも手に入れることのできない貴重なものです。この「資産」をどのように使うかは、お金の問題に匹敵するほど重要なことだといえるでしょう。

消費行動からは得られないこころの充足感に軸足を置き、日々の生活をステップアップさせることを目指してみませんか。もちろんお金の問題はとても重要です。しかしながら、お金の問題への対応策はいくつもあります。

古くからの名言に「足るを知る者は富む」というものがあります。生活レベルが高ければそれで幸せ、とはいえません。毎日を健康に、大切な人たちと交流しながら過ごすことを重要視できれば、こころの富は今この瞬間にも手に入れることができます。

まとめ

老後の生活と、お金の問題は切っても切れない関係にあります。その重要度は、ときに現役世代よりも高いかもしれません。老後の生活を支えるためのお金の問題は、いくつかの側面から総合的に考えなければなりません。生活そのものを構成する要素が変わりやすい状況だからです。

このページで特に強くお伝えしたいのは、以下の5点です。

  1. 老後の生活に欠かせないお金の問題は、「夫婦(もしくは家族)」が一緒か、もしくは「おひとりさま」かで大きく変わる。しかし、いずれの場合も受給できる年金だけでは支えきれていないのが現状
  2. 自分の生活は「最低いくら」で支えることができるかを事前に知っておく。そのラインを保つことができれば、無駄な出費も減らせ、手持ちの貯蓄であとどのくらい過ごせるかを“逆算”できる
  3. 老後の生活には意図せぬ急な出費が必要になることもある。それをカバーするための手段をいくつか調べておく(家を売る・生命保険担保の借り入れ・年金担保の借り入れなど)
  4. 退職後も健康ならば働き続ける。健康維持にも有益であるうえに、年金受給の時期を遅らせれば、実際受給するようになったときに大きな余裕がうまれる
  5. 考え方を「お金」から「こころ」にシフトする。元気に生活できればよいという考え方ができれば、若い頃には得られなかった充足感を手にすることもできる
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