老人ホームにかかる費用と選ぶときの注意点、家族で考えるお金のこと3項目

老人ホームにかかる費用と選ぶときの注意点、家族で考えるお金のこと3項目

ご家族が、いわゆる「老人ホーム」への入所・入居をするかもしれないと考え始めると、「いくら準備しておけばよいのか」、「入所・入居するための当初費用は」、「月額いくらを用意すればよいのか」という疑問がわいてきます。

さて、老人ホームへの入所・入居に際し、いくら位を想定しておけばよいのでしょうか。そして、入居・入所を検討するときに必要な知識・情報についてお伝えします。

1.老人ホーム(比較的経度)でかかる費用は?

老人ホーム(比較的経度)でかかる費用は?

いわゆる「老人ホーム」にはいくつもの種類があります。介護・支援がどの程度必要かによって、入所・入居すべき施設は異なります。

※老人ホームの種類や役割については、以下の記事もご参考になさってください。

老人ホームの種類と知っておきたい「それぞれの特徴・役割と費用」

2017.05.31
入所・入居する方が求める介護・支援が、比較的軽度な老人ホームでの費用についてご説明します。

1-1.サービス付き高齢者向け住宅/敷金2~3か月分+家賃として5万円~

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、比較的新しい“ジャンル”の入居施設です。「住宅」と名が付くとおり、まるでアパートやマンションのような賃貸住宅に近い存在です。

基本的に自立した生活が送れる方向けの施設で、「60歳以上の人」、もしくは「要介護・要支援認定を受けている60歳未満の人」が対象となります。最低でも安否確認・生活相談サービスを受けることができます。必要に応じて外部からの介助・介護サービスを受け入れているサービス付高齢者向け住宅もあります。

月額利用料金は、賃料や管理費、水道光熱費をベースに、追加で依頼したサービス(食費・清掃費・介護関連費用)がかかります。「まだまだ自分のペースで生活したい」、「生活支援までは必要でなく、自由に暮らしたいが何かのときが心配」という方には便利に利用できる住まいです。

運営会社や施設によって、展開する“価格帯”に差があり、一般的なアパートのようなものから、高級マンションのようなものまであり比較的自由に選べること、年々数が増えていることから空き部屋を待つ期間がない・短いことも特徴です。

持病・既往歴がある、要介護度が高いなど、ときとして受診や治療・介護が必要な方でも受け入れてくれるサービス付き高齢者向け住宅も増えていますので、WEBサイトを探し、資料請求してみるのもよいでしょう。単身のみならず、ご夫婦もしくは内縁関係の方などの二人での入居を受け入れているサ高住もあります(サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム│一般社団法人高齢者住宅推進機構)。

契約形態は、賃貸方式が約75%となっています(平成25年有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅に関する実態調査研究事業報告書(P28)│公益社団法人全国有料老人ホーム協会)。中には利用権方式(頭金としてまとまったお金を支払い、自室や共有スペースを終身利用できる)を採用している施設、終身建物賃貸借方式(賃貸借方式ではあるが、死亡した際に契約終了となる。配偶者がいれば、配偶者の生存中は引き続いて住むことができる)を採用している施設もあります。施設について問い合わせをした際、当初費用が大きく違うときは、契約形式が異なることもありますので確認が必要です。

1-2.有料老人ホーム/入居金0円~+月額12万円~

有料老人ホームには、

  • 介護付有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)

→しっかりとした介護体制を求める方が対象。日常生活全般への支援・介護に対応

  • 健康型有料老人ホーム

→支援や介護が必要ではない方が対象

  • 上記ふたつをミックスした住宅型有料老人ホーム

→介護が必要な方・不要な方が共に生活。必要な介護サービスは外部に求める

があります。

このことから、当初費用や月額利用料金に大きな開きがあるのが特徴です。

とはいえ、かかる費用がすべて自己負担になることはほとんどありません。「扶養控除(扶養控除│国税庁)」や「障害者控除(障害者控除│国税庁)」、医療行為を受けたり、それにまつわる必要経費が伴う場合は「医療費控除(医療費控除の対象となる医療費│国税庁)」を利活用できることがあるからです。

介護付有料老人ホームで多く採用されている契約形態は利用権方式が80.4%、建物賃貸借方式が15.3%の順で多く見られます。住宅型有料老人ホームならば、利用権方式は57.5%、建物賃貸借方式は37.3%の順です。

比較的大きなお金が当初費用としてかかる有料老人ホームですので、契約形態や、契約サービス範囲について丁寧に調べ、「こんなはずではなかった」と後悔しないようにしましょう。

2.「住宅系」の場合、その他の費用がかさんでしまうことも

上記の「サービス付き高齢者向け住宅」や「有料老人ホーム」は、どちらかというと介護ニーズよりも高齢者の住まい確保に主軸を置いたものです。そのため、どうしても当初費用や入居中の費用がかさみがちです。

先に触れたとおり、契約形態が利用権方式であったり、終身建物賃貸借方式であったりと、長期にわたっての利用を前提にした施設が多いのが特徴ですので、まとまった費用が必要なのです。

また、体の自由が効くうちに入居するスタイルですので、自分の意思で出かけたりなど、娯楽や気晴らしに必要なお金もかかります。しかしながら、これらは入居するご本人が「そもそも自宅で行っていること」と捉えれば、日常生活の場を施設に移しただけ、ともいうことができるでしょう。これまでの生活をほとんど変化させずに賃貸住まいを始めた、と考えれば、生活費に大きな差額は生じないというケースも少なくありません。

もしも将来、実家に帰る予定が立てられないといった事情を抱えたご家族ならば、介護を受ける親御さんが元気なうちに家を売るなりし、当初かかる経費を捻出することも選択肢の一つに入ってくるはずです。

契約に先立って、注意しておきたいのは以下の点です。

  • 住み替えの必要があるかどうか

→体調や支援・介護の要求度に応じて、のちに住み替えする必要があるかの確認。終身利用ができないときは、いくつかの“シナリオ”を準備し、対処できるようにしておく

  • 医療施設との関係性

→支援を要する状態が軽度であっても、将来的に要介護と認定されることもある。病気やケガをする可能性を考え、協力関係にある医療機関・介護サービス業者を確認しておく

  • 月額利用費の内訳

→月額利用料金のなかに、何が含まれているのかを確認。提示された金額とは別に「水道光熱費」「管理費」などがかかることもある

  • 職員についての確認

→高齢者は、ヒートショックや早朝高血圧による脳梗塞など、夜間や早朝に体調を崩すことも少なくない。夜間にどのくらいのスタッフがいるのかも調べておきたい

どのような事柄であっても、口頭説明だけではなく、紙媒体での資料を入手し熟読、契約前に細かくチェックしておきましょう。

また、上記の住宅系老人ホームは、住まいとなる場所ですので、住所変更をする必要があります。いざというときに必要な介護の外部サービス(自治体が指定するサービス業者から提供される地域密着型サービス)を受けられなくなってしまうからです。

3.老人ホーム(比較的重度)でかかる費用は?

老人ホーム(比較的重度)でかかる費用は?

上記の「住宅系老人ホーム」ではなく、介護サービスに主眼を置かざるを得ない場合、違う老人ホームを探さなければなりません。介護を求める方の程度が比較的重度(要介護3~5)の場合、ケアマネージャーなどにより以下のような施設への入所・入居が検討されます。このときは、介護保険の利活用で思ったよりも費用が安くなることがあります。

3-1.介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)/月額10万円~

公的な性質をもつ介護施設で、寝たきりの状態、もしくは認知症を患っている方向けです。基本的に必要な期間(終身)いることができますし、自己負担額が比較的安価であることもあり、「人気の高い施設」といえます。食事や入浴など生活のケアや、リハビリを受けることもできます。

入居には審査があり、家族の介護を受けられないなど緊急度の高い方が優先されますので、空き待ちを余儀なくされる方も多くいらっしゃいます。空き待ちを求められる場合は、ケアマネージャーなどと相談しながら、外部サービスを利用しながら自宅で介護をすることとなります。

3-2. 介護老人保健施設/月額8万円~

地方公共団体や医療法人が運営している介護老人保健施設は、高齢者のみならず、40歳以上で特定疾病にかかり介護が必要となった方のための施設です。要介護1以上で、生活の世話やリハビリを受けることができますが、長期いる場所ではなく、病気やケガの状態がよくなったものの、自宅へ戻るにはまだ難しい方向けといえる施設です。「短期間お世話になるところ」というのが基本的な理解の仕方です。

3-3. 介護療養型医療施設/月額10万円~

介護老人保健施設の機能に、医療・介護におけるケアを受けられる施設です。病院とほぼ同様のイメージですが、これまでの流れから医療行為を必要としない方が多く利用している側面もあり、今後廃止される予定です。施設そのものが他の施設への切り替えを促されています。

4.「介護・医療系」の場合、介護サービスや医療費がかさんでしまう

先に触れた「住居系施設」では、生活をいかに充実させるかという面で費用がかかります。一方「介護・医療系施設」に入らざるを得ない方(要介護3~)にとっては、介護サービス費や医療費がかさんでしまう傾向にあります。福祉用具や紙おむつの購入といった費用も必要となることでしょう。

しかしながら、これら介護・医療にかかる費用は、介護保険でカバーされたり、世帯の所得額に応じて自己負担額の上限が定められる「高額介護サービス費支給制度」があったりと、社会全体で支える仕組みがあります。
※詳しくは「介護費用はいくらかかる?平均額と平均期間、それに対抗する方法」でも解説していますのでご覧ください。

介護費用はいくらかかる?平均額と平均期間、それに対抗する方法

2017.05.22

また、介護保険の意義や、介護サービスを受けるために必要な手続き、介護サービス利用料について厚生労働省がわかりやすくまとめたサイトがあります。また、「介護事業所ナビ」というスマートフォンアプリもあります。介護についての事前知識として学んでおくことも必要です(介護事業所・生活関連情報検索│厚生労働省)。

5.老人ホームへの入所・入居を考え始めたら、「財産の総括」をしてみる

将来的に、いわゆる老人ホームに入所・入居せざるを得ないと考え始めたら、要介護者たる方ご自身を含め、ご家族で、要介護者ご自身の「財産の総括」をすることが有益です。できれば、要介護者ご自身が物事を自分で判断できるうちに話し合いをしておきましょう。

認知症などによりご本人が正しい判断ができない場合、さらにご家族間で何らかの争いがあるとき、財産の管理には「成年後見制度」を付けないとならないこともあります。こうなると、要介護者の財産をスムーズに老人ホーム入所・入居に使用することができず、ご家族の悩みがいよいよ深くなってしまうこともあるのです。

5-1.【収入】当初金用の収入のまとめ

【収入】当初金用の収入のまとめ

入所・入居に伴い、当初費用が必要な施設もあります。また、月々の自己負担額も発生します。これに充てるための収入を以下の項目ごとに整理しておきましょう。

5-1-1.住宅売却

要介護者ご本人が自宅に帰ってくることが見込めない、もしくはご家族が家を受け継ぐことが難しいときは、家を売却することを考えてみる。家や土地を売却できる「最低金額」で見込み、無理のない資金計画とする。持ち家でなくても、他に売却できるものがあるかもしれない

5-1-2.預貯金や保険

介護を受けている方がこれまでに蓄えてきた預貯金の額を知っておく。退職金や特定の病気と診断された際に入金される生命保険、お亡くなりになったときに入ってくる生命保険など、大きな金額のお金も把握しておく

5-1-3.月々の収入

公的年金や給与、ときには傷病手当など、月々の収入についても見込み金額を知っておく。家族が援助できるならば、月にどのくらいの金額を出せるのかも計算し、入所・入居後の見込み生活費用を把握する

5-2.【収入】月々の収入額の把握

【収入】月々の収入額の把握

スムーズに施設へ入所・入居できても、月々必要な自己負担額をカバーできるだけの手持ち金を理解できていなければ、そこに居ることはできません。月々の支出に当てられる金額はどのくらいなのか、以下の項目でチェックしておきましょう。

5-2-1.年金

高齢になった、何らかの理由で特定の障害を負ってしまったときには年金が支給されます。働けなくなってしまったときはこの年金が収入の主な柱となりますが、働いていた間に得た収入に対して納付金はことなりますし、かけた年数も人により異なります。厚生年金なのか、国民年金なのかによっても、受け取れる年金額に差が出ます。

月々の生活費(入所・入居費)に届くのかが不安なときは、お住まいのエリアの日本年金機構の事務所に出向き、要介護者が受け取れる予定の金額を問い合わせてみましょう。この場合、本人確認をしなければなりませんので、ご本人が年金手帳を持参しなければなりません。もしもご本人の容態によって出向くことが難しく、ご家族が代わりを果たされる場合は、委任状を持参する必要があります(申請・届出様式│日本年金機構)。また、毎年「ねんきん定期便」という郵送物も届きますので、すぐに捨てずにチェックするようにしておくとなおよいでしょう。

5-2-2.医療保険

老人ホームに入ろうとしている方がかけているかもしれない医療保険の内容をチェックしてみてください。特定の疾病・ケガに対して支払われるお金があるかもしれません。これもまた、毎年送られてきているかもしれない「保険内容の確認」「保険更新に関わるお知らせ」などでチェックできる可能性があります。もしも保険証券しかない場合は、保険会社に問い合わせをします。このときもまた、本人確認が求められますので、ご本人が電話をする必要があります。保険会社によっては、指定代理請求人(本人が保険金・給付金を請求できない場合に、本人に代わって請求ができる人)を指定し、家族が契約内容の照会・保険金の請求を行うことを認めているケースもあります。必要に応じ、そのようなサービスに申し込みをしておくのもよいでしょう。

5-3.【支出】月々の支出をシミュレーション

入所・入居の当初費用はご本人の財産の処分やご家族の協力で何とかしたとしても、月々の支出(入所・入居月額)は可能な限りご本人の収入でやりくりしたいところです。もしも入所・入居が長引いてしまった場合、ご家族がいつまで援助を続けられるかは不透明です。子育てや教育費が必要、意図せずリストラに遭ってしまったなどで、自身の生活で精一杯になってしまうことも考えられるからです。

老人ホームへの入所・入居を考えておられる方の要介護度に合った施設はどこなのか、そこで必要な家賃・食費・光熱費・介護費は概ねいくらなのか、幾通りかを知っておくとよいでしょう。ケアマネージャーなどに相談し複数のプランを知ることで、毎月かかる費用を想定しておくと後々の心配事が少し減ります。

6.認知症による施設利用者は右肩上がり、お金の相談は早めに

厚生労働省が公表している資料「施設・住居系サービスについて」(施設・住居系サービスについて│厚生労働省)の49ページ・50ページでは、

  1. 認知症高齢者グループホーム(有料老人ホームに分類される)の事業所数は平成20年には9,292箇所で利用者数は13.5万人、平成25年には12,152箇所、17.8万人に
  2. グループホームに入居している人の平均要介護度は、平成20年では2.64、平成25年では2.80に
  3. 認知症対応型共同生活介護の要介護度別利用者割合は、平成20年では要介護5は8%、要介護4は17%、要介護3は30%だったところ、平成25年では要介護5は12%、要介護4は18%、要介護3は27%に推移

という結果が示されています。

認知症を伴って入所・入居をする方は増える一方、また、実際に入所・入居をされた方の状況も年々深刻化しているすがたが見えてきます。

このことから考えても、入所・入居をお考えの方ご本人が適切に預貯金などの把握ができているうちに、「これからのお金のこと」を家族で相談しておくのがベストな道、といわざるを得ません。

まとめ

いわゆる「老人ホーム」に入所・入居を検討するにあたり、当初費用や月額、契約にかかる大切なこと、家族で話し合うべきことをご説明しました。ここでご記憶いただきたいのは、以下の5点です。

  1. 「住宅系老人ホーム」はその他費用や当初費用が、「介護・医療系老人ホーム」では月額費用が多く求められる傾向にある
  2. 「住宅系老人ホーム」への入居を希望するときは、契約内容をしっかりと確認。チェック項目は、医療施設との関係性・月額費用の内訳・夜間の職員数など
  3. 「介護・医療系老人ホーム」は介護保険でカバーされる費用も少なからずあり人気が高い。しかしながら、家族が介護に携われないなど、入所にかかるチェック項目も多い
  4. 老人ホームへの入所・入居を考え始めたときには、要介護者ご本人の財産のチェックを。入所・入居の当初費用や利用月額などをどう捻出するかを家族で話し合う
  5. 認知症程度が高くなると、お金の管理ができなくなる。デリケートな問題だが家族間で早期に費用のシミュレーションをしておかなければ、成年後見人を立てなければならないなどトラブルの種にもなりうる