在宅介護

介護保険とは?何のために必要なの?誰がいくら払うの?

「納めてはいるけれど介護保険はどういったものなのか」、「介護保険はどのように使われているのか」といった疑問は、実際に介護サービスを利用した方でないとわかりづらいものです。私たちが毎月納めている介護保険料は現場でどのように使われているのでしょうか。介護保険の全体像と、そのお金がどのようなシーンで活用されているのか、その具体例などをご説明します。

1.介護保険とは?何のために必要なの?

介護保険とは、1997年に制定された「介護保険法」に則り、2000年からその制度が運用開始となりました。私たちの支払う介護保険料に加え、国のお金と合わせてプールし、介護の必要な方に利用してもらうものが介護保険です。介護保険の仕組みを知る前に、「介護保険制度がなぜ導入されたのか」について理解しておく必要があります。

1-1.なぜ介護保険が必要になったの?

介護保険制度が求められる背景には、皆さまご存知のとおり「少子高齢化」があります。「平成27年国勢調査人口速報集計結果〈全国・都道府県・市町村別人口及び世帯数結果の概要〉」を見てみましょう。

1-1-1.人口は「初の減少側面」に

国勢調査開始の大正9年以降、平成27年には日本の総人口が初めて減少傾向に入りました。大正9年を100%としたとき、5年間人口増減率がピークであった昭和25年には15.3%増の8,411万5千人、平成27年には人口増加率は-0.7%で1億2,711万人となりました。これは、人口自然減(生まれてきた子の数-死亡者で増ないしは減となる)の側面に突入したことを現しています。平成22年に頂点であった総人口1億2,805万人が、平成27年には1億2,711人と、5年間で94万7,000人減少してしまったのです。

平成27年国勢調査人口速報集計結果〈全国・都道府県・市町村別人口及び世帯数結果の概要〉より

1-1-2.世帯数は「増加」「世帯あたり人数減少」

平成27年国勢調査人口速報集計結果〈全国・都道府県・市町村別人口及び世帯数結果の概要〉より

人口が減少傾向を示しているのと同時に、世帯数は増加しています。昭和45年には3,017万4,000世帯あり、1世帯あたりの人数は3.45人でした。年々世帯数は増加、平成27年には5,340万3,000世帯となり、1世帯あたりの人数は2.8人になってしまいました。これは、核家族化がいまだに進んでおり、なおかつ出生数も依然少ないままであることを示しています。

1-1-3.人口は「都市部」に集中

平成22年と27年を対比すると、人口は都市部へ流れ込んでいることが見えてきます。上位の都市の中で、人口増が顕著なのは以下の都市です。

  • 都市名=平成27年人口(平成22年人口・人口増加率)
  • 福岡市=153万9,000人(146万4,000人・5.1%)
  • 東京23区=927万3,000人(894万6,000人・3.7%)
  • 川崎市=147万5,000人(142万6,000人・3.5%)
  • 仙台市=108万2,000人(104万6,000人・3.5%)
  • さいたま市=126万4,000人(122万2,000人・3.4%)
  • 札幌市=195万4,000人(191万4,000人・2.1%)

これらの数値を見ると、子らは進学や就職で地元を離れ都市部に集まり、親らは地元に残されるという構図が見えてきます。

1-1-4.高齢者比率の増加

人口減少+世帯数増加+都市部集中+少子化に加え、高齢者比率の増加が介護問題に拍車をかけていることも介護保険制度が求められているひとつの側面です。では、日本の総人口に対する世代別グラフを見てみましょう(平成27年国勢調査人口等基本集計結果〈結果の概要〉│総務省)。

平成27年国勢調査人口等基本集計結果〈結果の概要〉より

日本の人口推移を語るのに欠かせないふたつの局面である「第1次ベビーブーム(昭和30年)」、「第2次ベビーブーム(昭和55年)」の頃までは、65歳以上の世代は美しく“三角形”を描いていました。しかし、平成27年時点では、そのピラミッド型が崩れ、なおかつ80歳以上の方もぐっと増えていることがわかります。

「ご長寿」はそれ自体とても望ましいことではありますが、健康であってこそです。しかしながら、年齢が上がれば上がるほど、病気やケガ、認知症など高齢者ならではの健康リスクが増加するのも当然のことです。

1-2.介護保険とは、「社会的問題」へのひとつの回答

現在の日本は、人口減少やそれを構成する世代のアンバランス、いまだもって加速する核家族化や少子化によって、「高齢者へのケアが行き届かなくなる」という問題をはらんでいます。過去には、病院がその役割を担っていたこともありましたが、昭和38年に制定された「老人福祉法」、平成9年に制定された「介護保険法」により、老人福祉や介護について、役割の異なる施設やサービスが細分化されました。

このような施設やサービスの利用について、すべての金額を負担することはとてもつらいものです。社会保険や国民健康保険のように「みんなで支払って必要なときに助けてもらう」という共助の性質を介護の世界に取り入れるために必要な仕組みが、介護保険だったのです。

2.介護保険料はだれが・いくら支払っているの?

みんなで高齢者を支えるための介護保険制度ですが、だれがどのようにお金を納め、仕組みをまわしているのでしょうか。

2-1.40歳以上の国民が「税金」として納める

介護保険料を自治体に納めるのは、

  • 40歳~64歳までの人(第2号被保険者)
  • 65歳以上の人(第1号被保険者)

です。

まだ若いといえる第2号被保険者の支払う保険料は、社会保険・国民健康保険など加入している医療保険の保険料と合算して納めます。社会保険・国民健康保険それぞれに算定方法があります。

市民が納入した介護保険料は、「財政安定化基金」に組み入れられ、市町村での過不足を補い、一般財源を圧迫しないような工夫がなされています。財政安定化基金の設置主体は各都道府県で、国・都道府県・市町村(保険料)で負担しています(財政安定化基金の基本的仕組みについて│厚生労働省)。

いよいよ介護を要する方も増えてくる65歳以上の第1号被保険者の介護保険料は、前年度の合計所得金額に応じて決まり、国民健康保険料(65歳から74歳)ないしは後期高齢者医療保険料(75歳以上)とともに自治体に納めます(介護保険料の決め方│東京都北区)。条件によって、支給される年金から天引き(特別徴収)されることもあります(年金から介護保険料・国民健康保険料(税)・後期高齢者医療保険料・住民税を天引きされるのはどのような人ですか│国民年金機構)。

もしも急な入用などで年金を担保にお金を借り入れしている場合は天引きされませんので、自治体から届く納付書を使いたり、口座振替を用いたりし、自身で納付(普通徴収)しなければなりません(年金担保貸付Q&A│独立行政法人福祉医療機構)。

※年金を担保にお金を貸し出す業務は、独立行政法人福祉医療機構にのみ許されています。いわゆる「闇金業者」のような会社が言葉巧みに誘うこともありますが、注意が必要です。独立行政法人福祉医療機構からの借入は、地域の銀行が取り扱っていますので、何か入用の折には銀行に問い合わせてみてください。

2-2.公金(国のお金)

先に、財政安定化基金について触れましたが、これは市民が納めた介護保険料が全体の50%です。残りの50%は、市町村や県、国の税金でまかなっています。このように、介護保険料と税金とを組み合わせることで、安定的に運用できる工夫がされています。

3.介護保険はどのように使われているの?施設やサービスの支払いは?

介護保険適用とされ、実際の介護の場で基本的に9割をカバーしてもらえる方は、以下のとおりです。

3-1.【使える方】65歳以上(第1号被保険者)

いわゆる「高齢者」とされる65歳以上であって、なおかつ要支援・要介護と認定されれば、介護保険を用いた介護サービスを利用することができます。

※日本人であっても海外に住んでいる、介護保険が適用されない施設では介護保険制度を利用することができません。

3-2.【使える方】40歳から64歳(第2号被保険者)

もしも40歳以上65歳未満であっても、必要に応じて介護保険を利用することができます。せっかく納めている介護保険料ですから、何かの時には使いたいものですが、そのハードルは若干高くなっています。特定疾病と呼ばれる、加齢に伴い発病・発症するとされる病気であることが条件で、その内容は以下の通りです(特定疾病の選定基準の考え方│厚生労働省)。

  • がん(末期)
  • 関節リウマチ
  • 筋萎縮性側索硬化症
  • 後縦靱帯骨化症
  • 骨折を伴う骨粗鬆症
  • 初老期における認知症
  • 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病とその関連疾病
  • 脊髄小脳変性症
  • 脊柱管狭窄症
  • 早老症
  • 多系統萎縮症
  • 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
  • 脳血管疾患
  • 閉塞性動脈硬化症
  • 慢性閉塞性肺疾患
  • 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

上記の疾病その他が3~6ヶ月以上続き、継続的に要支援・要介護状態となる可能性が高いときに、特定疾病とみなされます。

3-3.介護保険を用いることのできる施設・サービス

支援や介護の程度は、段階が定められています。詳しくは「親の介護は誰が見る?義務は誰にある?解決策5つ」でご説明していますのでご参考になさってください。

この要支援・要介護度や家族がどこまで介護に関わることができるのかなど、総合的に考え、介護プランが設定されます。その相談はお住まいのエリアの「地域包括支援センター」で受け付けてもらえます。

専門的な知識や実例から、ケアマネージャーなどの有資格者が、介助・介護が必要な方の状態に合わせたケアプランを策定してくれ、入居・入所すべき施設や利用が推奨されるサービスがわかってきます。

【施設】

  • 介護付き有料老人ホーム
  • グループホーム
  • 特別養護老人ホーム
  • 介護老人保健施設
  • 介護療養型医療施設

※基本的に要介護1以上で入居できる施設。施設ごとに条件は異なるのでケアマネージャーと相談します。

【サービス】

  • ケアプランの作成(ケアマネージャーなどと相談し介護に必要なプランを作ってもらう)
  • 訪問介護(入浴や排泄の手助け)や、訪問入浴介護(入浴車などの巡回)
  • 訪問リハビリテーション(自宅ではできないリハビリ実施のため理学療法士などが訪問)
  • 通所リハビリテーション(介護施設へ出向き、デイサービスやリハビリを受ける)
  • 短期入所介護(必要に応じて短期間、養護・介護施設に入所しケアを受ける)
  • 福祉用具貸与・購入(レンタル料9割給付もしくは購入費支給)
  • 住宅改修費(手すり設置や段差解消などの小規模住宅改修費をカバー)

※いずれもケアマネージャーと相談の上、必要とみなされた分だけ利用できます。介護保険利用の書類作成も必要であり、誰もが好きなだけ利用できるわけでないことに注意しましょう。必要最低限のサービスでカバーできないとき・家族の疲弊や出張などで施設を利用するときは、10割負担となることがあります。

4.介護保険利用の際には「介護報酬ルール」で額を算定する

介護保険の仕組みや利用の仕方といった概要はお解りいただけたのではないでしょうか。では、介護保険でカバーする範囲を定める介護報酬はどのように定められているのでしょうか。そして介護保険でカバーできないものには何があるのでしょうか。

4-1.「単位」で表示、1単位は地域により若干異なる

介護サービスを利用する際、それぞれの内容により費用が異なるのはご想像のとおりです。費用算定は厚生労働省の定める介護報酬のルールに則っていますが、「円」ではなく「単位」で表現されます。

この「単位」は1~2年に一度改定されています。最新の情報はこちらでご覧ください(介護報酬│厚生労働省)。

例えば、訪問介護では、所要時間によって単位が定められています。

【身体介護が中心】

  • 所要時間が20分未満=165単位
  • 所要時間が20分以上30分未満=245単位
  • 所要時間が30分以上1時間未満=388単位

【生活援助が中心】

  • 所要時間が20分以上45分未満=183単位
  • 所要時間45分以上225単位

【訪問看護・病院または診療所の場合】

  • 所要時間20分未満の場合=262単位
  • 所要時間30分未満の場合=392単位
  • 所要時間30分以上1時間未満の場合=835単位

【訪問リハビリテーション】

  • 1回=302単位

【通所リハビリテーション・大規模施設の場合】

  • 1時間以上2時間未満=要介護1は323単位、要介護2は354単位、要介護3は382単位、要介護4は411単位、要介護5は441単位

1単位は概ね10円ですが、お住まいの地域によって若干異なります。

※ご紹介は一例で、「平成27年度介護報酬改定について」から引用しています(指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成十二年厚生省告示第十九号)(抄)【平成二十七年四月一日施行】│厚生労働省)。

4-2.必要なだけサービスの利用ができるものなの?

介護保険の対象としてカウントされたものであっても、すべての人が望むだけ利用できるわけではありません。サービスの公平性を保つため、必要最低限のものが認められます。それは、要支援・要介護度によって、1カ月あたりの利用限度額という形で定められています。

また、対象の方が得る年間収入額により、自己負担が1割・2割・3割の方に分かれます。所得が「現役」もしくは「現役並み」の方には可能な限り負担をしてもらい、できるだけ不公平感が生じないようにし、なおかつ制度自体を適正に保つためです。

4-3.所得の低い方には「高額介護サービス費支給制度」がある

所得が高い方ならば自己負担額が2割ないしは3割であっても手持ちのお金でカバーできるでしょう。しかしながら、残念なことに所得が低い方にとっては1割の負担であっても辛いものかもしれません。そのような場合は、「高額介護サービス費支給制度」により自己負担額の上限も決まっています。しかしながら、それを知らないという方もいらっしゃるかもしれませんので、「介護費用はいくらかかる?平均額と平均期間、それに対抗する方法」をお読みになって、ケアマネージャーに相談してみてください。

4-4.介護保険でカバーできないものは何?

例えば、食事や嗜好品といったものは、そもそもその方がどこにいても自分で負担すべき費用です。そのような、基本的に手出しすべき費用については、介護保険の利かない自己負担となります。

また、入所した施設で標準的に行っていない特別な外出(自己の用事)などでスタッフに付き添ってもらった、など、特殊なケースも自己負担となります。

生活を成り立たせるためごくごく基本的なものと、(入所者の場合)特別な外出はすべて自己負担、と考えておくとよいでしょう。

5.さらに加速する高齢化、制度の変化に注意して

介護保険制度は、その運用実態や介護サービスに関わる方々の人件費など、「社会の動き」に連動して変化してゆくものです。実際、介護報酬は平成24年・平成26年・平成27年に改定されています。今後もその変化は重ねられていくでしょう。

わからないことはケアマネージャーなど、介護保険やそれにまつわる制度に通じた人に「可能な限り無理のない介護ができるよう家族を助けて欲しい」と伝えてください。また、もしも長期にわたった介護生活になりそう、と思っておられるご家族は、将来の制度の変化に柔軟に対応できるよう、余計目に予算立てをしておく必要がありそうです。

まとめ

高齢化が進む中、今後さらに介護保険の重要性はまして行くことでしょう。今現在私たちが知らなければならない「介護保険の基本」は次の6つの点です。

  1. 介護保険は、少子高齢化や核家族化、都市部への人口集中など現代日本が抱える問題を「介護」の側面から支えるためにつくられたもので、共助の性質をもつ
  2. 介護保険料は、40歳~64歳までの人(第2号被保険者)と65歳以上の人(第1号被保険者)が支払い、国・都道府県・市町村も財政安定化基金という形で資金のやりくりをしている
  3. 介護保険を利用できるのは65歳以上の要支援・要介護者のみならず、40歳以上の特定疾病認定者。がんの末期や初老期における認知症、脳血管疾患なども含まれる
  4. 介護保険を利用した際の介護報酬はその内容により「単位」で定められていて、1単位は約10円。
  5. 望むだけのすべてのサービスを利用できる訳ではなく、上限が決まっている。もしも致し方なく上限額をオーバーしてしまった場合は、超えた部分を全額自己負担
  6. 過去に介護報酬が改定されてきたように、今後も介護にまつわる仕組みは変化する可能性がある。ケアマネージャーなど制度に精通した人に相談をし、費用面でも自由が効くよう余裕を持った準備を
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