これは物忘れ?物忘れの原因とそれを抑制する手段4つをご紹介

認知症

ご自分ないしは親御さんに物忘れの場面が増えると、「認知症の前触れか」と不安になってしまいます。何事も、早め早めの診断・治療が必要です。今現れている症状が病院に行くべき物忘れなのかどうか、事前に知っておくことはとても大切です。さらには認知症ともなれば、早めに病院に行かなければなりません。

物忘れとはどのような状態を指すのでしょうか。そして、認知症につながる物忘れにはどのような状態が現れるのでしょうか。今回は記憶について、そして一般的に「物忘れ」とされるものについて広くご説明します。

1.記憶の仕組みから「物忘れ」を知ろう

記憶とは、人が生まれてからずっと蓄積され続けるものです。人間として生活するために必要な身体動作、コミュニケーションのための言語、より高度な意志伝達を行うための身振りやしぐさなどがそれです。

1-1.記憶が積み重ねられるステップと記憶の種類

脳は外部からの刺激(視覚・聴覚・味覚など)を溜め込み、それを記憶します。その仕組みは

  • 記銘=であった事柄を心で捉える
  • 保持=記銘した内容を維持する
  • 再生=保持した事柄を脳内から取り出す

の3ステップを踏みます。これら脳内に取り込んだ情報を、必要に応じて取り出せる状態にあるのが「記憶」と呼べるものです。

また、記憶は「エピソード記憶(いつ・何があった)」、「意味記憶(言葉の意味・モノの名称)」、「手続き記憶(何かを行うための手順)」などに分けられます。これらの記憶が欠落することが、物忘れないしは認知症とされる状態です。

1-2.物忘れが生じるのはどんなとき?

人間は、経験したこと・学んだことをすべて記憶している訳ではありません。自分自身は意識しなくとも、脳は自然に「特定の記憶の必要性」を分類し、長く蓄積すべきかどうかを判断し、整理しているからです。しかしながら、優秀な脳もときとしてトラブルを起こすことがあります。これが物忘れの原因です。

1-2-1.記憶の仕舞い場所を失念

記憶には、それぞれに対応した「仕舞い場所」があります。その場所を見失うことで物忘れ現象が現れることがあります。いわゆるど忘れがこれに類する物忘れで、ちょっとしたヒントやその記憶そのものにまつわるエピソードをきっかけに「ああ、思い出せた」というのがこのパターンです。

記憶そのものが失われたわけではなく、仕舞い場所へたどり着けないケースです。

1-2-2.ストレスにより脳が正しく働かない

学校や社内でのいじめ・ハラスメントは、人のこころに大きなストレスを与えます。その時期を経過し、こころが安定した頃に、いじめの渦中にあった時のことを詳細に思い出せないという経験を持っている方は少なくないはずです。

そのようなこころの問題は、思い出すだけで再度恐怖を呼び起こします。この問題を回避するため、こころが記憶にフタをし思い出させないようにします。これは防衛本能のひとつで、とても自然なことです。

また、実際にいじめやハラスメントといったストレス状態の真っ只中にあるとき、脳は集中力を欠いてしまいます。本来不要なストレスは、正しい理解力・正しい記憶力を阻害してしまいます。このようなときもまた、物忘れを起こすことがあります。

1-2-3.睡眠不足で脳が疲労する

脳はとてもデリケートで、疲労しやすいものです。脳の疲労を取り去るため時間・質ともに正しい睡眠が取れないと、翌日すっきりしないという体験をなさったことはないでしょうか。目覚めたときにしゃきっとしない、なんだかぼーっとしている、というのは脳の疲労かもしれません。

この状態が続くと、記憶の整理や傷んだ脳細胞の修復が行えなくなり、記憶を管理する海馬の能力低下の原因になるとされています。最近「睡眠負債」といった言葉が広く見聞きされますが、睡眠不足は、物忘れだけでなく命を左右する大きな病気の原因とされ、注目されているのです。

1-2-4.服薬による健忘

睡眠導入剤など、一部の薬剤の服用により物忘れが生じることがあります。服薬して実際に眠りに付くまでの間、もしくは、途中で目が覚めたとき、何をしていたのかを覚えていないことがこれに当たります。これは一過性前向性健忘と呼ばれます。

朝起きたとき、記憶はないのに何かを食べた跡がある、思いもよらないメールの送信記録がある、ネット通販で買い物をしていた、などがその代表例です。ときには車を運転してしまい事故を起こしたという危険な例もあります。

もしも睡眠導入剤など健忘を引き起こすとされる薬を服用している方は、眠る直前に飲むなど、指導されたとおり正しく服薬してください。

2.物忘れと認知症はここが違う!

上記で触れたとおり、若く健康な方であっても物忘れ症状を起こすことはまれではありません。しかしながら、一番心配なのは「単なる物忘れ?それとも認知症の前兆?」ということではないでしょうか。

2-1.認知症を正しく理解する

厚生労働省が公表している認知症のサインは以下のとおりです(認知症「認知症のサイン・症状」│厚生労働省)。

認知症「認知症のサイン・症状」│厚生労働省

これら認知症による物忘れと、上で触れた“普通の”物忘れの症状は、意外に大きな違いがあることにお気づきでしょうか。

  • 自分自身の行動そのものを覚えていない
  • 会話や行動の面で生活に影響が出る(リカバリーできない範囲にまで深刻な影響が及ぶ)
  • 何かを忘れていることを自覚できていない

これらが、認知症の症状(もしくはその前兆)です。しかしながら、いわゆる「物忘れ」の症状が同じ世代の人に比べひどいとなると、軽度認知症である可能性も否めません。特に仕事や家事などで常に行っている一連の動作で「次は何をするのかわからなくなることがある」ということがあれば、早めに物忘れ外来など病院で受診することをおすすめします。

3.40代・50代でも起こりうるひどい物忘れ「若年性認知症」

認知症は、何も60代以上のいわゆる高齢者にだけ起こるものではありません。というのも、認知症の中には、高齢者に多いアルツハイマー型認知症のみならず、病気などから引き起こされるものもあるからです。

3-1.生活習慣や病気により起こる過度な物忘れ

物忘れ・認知症の中には、脳の血管のトラブルを原因とするものがあります。たとえば脳梗塞や、脳内出血です。脳の細胞は、血流に乗ってやってくる栄養素や酸素がなければ死に絶えていきます。脳の血管が詰まったり、血管が破れたりして、正常な血流を確保できないとき、脳の細胞の一部が死滅し、物忘れ・認知症の症状を呈することがあります。また、ある種の病気により、体に有害な物質が体外に排出されないことなども物忘れ・認知症様症状を招くことがあります。

これらを避けるためには、以下のことを心がけてください。

  • 血液がサラサラと流れるように心がける=高脂血症を解消する・積極的に水分補給をする
  • ビタミンB1を摂取する=食生活の偏りを解消する・アルコール飲料を控えめにする
  • 肝臓・腎臓をいたわる=食生活を見直す・病気を指摘されたら治療を開始する

※認知症の種類や原因については、以下の記事もご参考になさってください。

日々の生活のあり方が、ひどい物忘れや若年性認知症につながる可能性もあります。これは、厚生労働省で行われた調査資料からもわかります。若年性認知症(18~64歳)の基礎疾患のトップは、脳血管性認知症で39.8%もの値を示しています。それについでアルツハイマー病が25.4%で2位、頭部外傷後遺症が7.7%で3位と続きます(若年性認知症の実態等に関する調査結果の概要及び厚生労働省の若年性認知症対策について│厚生労働省)。

若年性認知症の実態等に関する調査結果の概要及び厚生労働省の若年性認知症対策について│厚生労働省

4.物忘れ・認知症への対策は?

上記でもわかるように、生活習慣により、ひどい物忘れや若年性認知症となることも少なくありません。「もしかして」と自覚するようになったら、次のような行動をとってください。

4-1.物忘れ外来などの病院へ行く

単なる物忘れが認知症へと移行していくことも否定できませんので、ご自分で不安に思われたら早めに病院へ行きましょう。単なる物忘れであればそれで安心できますし、もしも何らかの病気から重い物忘れ・認知症の初期症状が発見されれば、それへの対策を立ててもらえます。

4-2.生活習慣の建て直し

睡眠不足が続く、食生活が乱れたまま、であれば、物忘れのみならず全身疾患へとつながることも否定できません。まずは日常生活を振り返り、自分に不足しているものがあればそれへの対策を講じましょう。きちんと眠る・バランスの良い食生活を心がけることであれば、比較的楽に自分自身で対策を立てることができます。

4-3.サプリメントを用いる

極度に多忙なとき、栄養バランスを保つことはとても難しいものです。これを補う手段として、マルチビタミン・マルチミネラルなどのサプリメントを用いるのも方法のひとつです。ビタミンやミネラル類のサプリメントは、偏った食生活を“補正”する役割を担ってくれます。

とはいえ、もしも持病があり、定期的に服用しなければならない薬があるとするなら、医師や薬剤師に相談してください。たとえば、血圧降下剤を服用している方の中には「グレープフルーツの摂取はNG」、「ビタミンKは摂らないように」などの指示が出されることがあります。これは、薬効を抑制したり、副作用が大きく出たりすることがあるからです。

サプリメントとはいえ薬との飲み合わせがよくないこともありえますので、摂取してみたいと考えているサプリメントのラベルを写真に撮ったりし、医師に見てもらうことは重要です。アレルギーを持っている方はいわずもがな、です。

4-4.ストレスを溜めないよう心がける

何らかの理由で脳が活発に働きすぎ、交感神経が高ぶっている状態が続くと、それ自体がストレスとなってしまいます。ストレスが続くと、脳は自身の機能を保つため、入ってくる情報を一部遮断したりします。これが物忘れの原因となることがあります。

忙しすぎるとき、何らかの問題が一度に重なりあれこれと考えなければならないときこそ、1日のうちにリラックスできる時間を確保しましょう。日常生活のなかで欠かさないであろう入浴時間をいつもより少し長めに確保したり、ドラマや映画を見たりして、目の前のストレスから自分を解放するよう心がけてください。

まとめ

物忘れには、軽度で問題が無いものと、重症で早く手を打たなくてはならないものがあります。ときとして認知症にまで発展するケースもありますので、早く気づき、それに対応した行動を取らなければなりません。記憶があいまいになる・正しい理解や判断ができなくなる症状が現れると、日常生活に支障をきたしてしまうこともあり、大きな問題となります。

今回は記憶のメカニズムや物忘れの原因、認知症にまで発展するケースをご説明しましたが、特に覚えておいていただきたいのは次の5ポイントです。

  1. 物忘れとは、記憶をうまく取り出せない状況のこと。記憶の仕舞い場所にたどり着けない・ストレスから思い出したくない・脳の疲労・服薬による一時的な健忘などが原因となる
  2. 物忘れは記憶の一部が一瞬欠落すること。一方認知症は、自身の行動履歴を覚えていない・理解や判断が的確でない・忘れていることを自覚できていない状態が現れる
  3. 40代・50代でも「若年性認知症」を患うことも。脳血管性認知症・アルツハイマー型認知症・頭部外傷後遺症と続くので、日常生活のあり方に気を配ることが大切
  4. 物忘れへの対策は、まず自分で「おかしいかな」と気づくことから。病院で受診する・生活習慣を立て直す、ストレスを溜めないことが物忘れへの対策
  5. サプリメントで栄養補給をするという対策法も。しかしながら持病の薬との飲み合わせの問題も起こりがちなので、必ず医師や薬剤師に相談してから

 

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