認知症の初期症状と思い当たる場合の対応策

認知症と聞くと、「介護がより大変になりそう」「自分(娘・息子)のことも忘れられて介護のし甲斐も失われそう」と心配になってきます。確かに認知症が介護の負担を増やしてしまうことも事実ですが、初期症状に気づくことができれば、早めに手を打ち進行を遅らせるなどの治療に取り組むことができます。

認知症の初期症状にはどのようなものがあるのでしょうか。早めに気づくためにチェックしておいて頂きたいことをお伝えします。

1.認知症の「認知」とは?

そもそも論ではありますが、認知症の「認知」とは何を表していることばなのでしょうか。

辞書によると、

ある事柄をはっきりと認めること

認知│デジタル大辞泉)とあります。

心理学の世界にも「認知心理学」という分野があり、

認知心理学とは人間の心を情報処理システムと捉える立場(認知的アプローチもしくは情報処理的アプローチ)から研究する学問、あるいは知覚、記憶、思考、言語、学習などの認知の働きを解明しようとする心理学である

日本認知心理学会について│日本認知心理学会)とされています。

物事を理解・判断し、行動や言葉、表情にし、それらを記憶するという人間ならではの高次な能力を指しているのが「認知」といえます。

2.家族だから気づける「ささいなこと」が初期症状であることも

認知症は、基本的にある日突然起こることではありません。日々ゆっくりと進行していき、「やっぱりおかしい」と気づいたときに認知症と診断されてしまうのです。毎日の暮らしの中で、家族がチェックできる初期症状にはどのようなものがあるのでしょうか。

※認知症とされる病気の種類とその原因は「こんなにあった!認知症の原因と病名、症状について」でご説明していますのでご参考になさってください。

こんなにあった!認知症の原因と病名、症状について

2017.06.28

2-1.こころのサイン

認知症の初期症状には、「こころのサイン」もあります。活動的であった方が出かけるのを億劫がったり、社交的な方がふさぎがちになることもあるのです。また、幻覚や過度な妄想、さほど慌てることでもないのに焦りがちになったり、ちょっとしたことを大きな不安として感じたり、ささいな言葉尻に過剰に怒ることもあります。

ときとして、身なりに無頓着になったり、怒りっぽい状態を示すこともあります。

2-2.行動のサイン

正しいリズムでの睡眠が取れなくなり夜間に家の中を歩き回ったり、トイレに間に合わないようなことも起こるかもしれません。また、先に触れたとおりこころの問題から実際に暴力を振るうようになったり、口汚い言葉で誰かをののしることもあるでしょう。

食に関しても、食べることを拒否したり、その逆に無茶な過食をしてみたり、または本来なら食べてはならないものを口にしようとするケースもあります。

出かけた先から家に帰れなくなることもときにみられます。鍵のかけ忘れやモノの置忘れ、約束の日時間違い、お金を誰かが取ったとの思い込みなどが増えたりはしていないでしょうか。

2-3.会話のサイン

言葉による会話は、人間だけに与えられた高等なコミュニケーション手段です。言葉を駆使するためには、見聞きしたことを理解し、それが何なのかを判断し、相手に返す必要がありますが、認知症の初期症状では、その「言葉」が抜け落ちてゆく傾向にあります。

モノの名前が出てこなくなり、「あれ」「それ」で表現したり、言葉が出てこないことにいらだちを表現することもあるでしょう。何かを強調するためにわざわざ同じ言葉を繰り返す会話とはまったく違う、「会話のループ」がみられることもあります。本来の話題から突拍子もない話題に切り替わることも増えていませんか。

3.認知症の初期症状を感じたら

上記のように、大きく「こころ・行動・会話」面のチェックで違和感を覚えたらどうすればよいのでしょうか。まだ認知症と決まってはいないのに、親御さんや親族を認知症患者扱いするようで「家族間でお互いにきまりがわるい」と思ってはいませんか。

とはいえ、認知症はいざ介護となったとき、大きな障害となることがあります。早めの診断と治療が大切です。

3-1.スムーズに病院で診てもらうために

2010年における世界の主要国での高齢化率を見てみると、日本は「ダントツの1位」です。65歳以上の人口が日本では23%、2位のイタリア20.3%、3位のスゥエーデン18.2%と大きく差をつけています。これは医療の進んだ国であることの証でもあるでしょう(世界一の高齢社会│公益財団法人長寿科学振興財団)。

長寿は健康であってはじめて「うれしいこと」となります。健康寿命ということばもあるとおりですので、折に触れ、親御さんやご親族に「元気かどうか気にしていますよ」という配慮を示してあげるとよいでしょう。その上で、「一緒に検診を受けに行かないか」と誘うのもひとつの方法です。

高齢者は、自身でもそのことをよくわかっています。しかしながら、どこかでそれを認めたくない気持ちもあり、「認知症の検査に行こう」と言われることに抵抗感を覚える方も少なくないはずです。この心理に寄り添い、「一緒に行こう」「元気であって欲しいから」と伝えてあげてください。

3-2.病院に行く前に

もしも本人が病院に行くことを承諾したとしても、あからさまに認知症の検査とわかるとお互いに気まずくなってしまい、家族の仲が悪化してしまうことがあります。できれば事前にかかりつけ医に「認知症の予兆を感じる」旨を伝えておき、自然に検査をしてもらえる配慮を依頼するとよいでしょう。

信頼しているかかりつけ医の誘導ならば、「物忘れ外来」や「精神科(心療内科)」などへ移行するのもスムーズなはずです。家族からの指摘よりも、第三者の医療従事者の指摘のほうが受け入れやすいものです。

もしもかかりつけ医が定まっていない場合、高齢者を多く診ている病院を探し出してください。そしてそこをかかりつけ医にし定期的に通えば、認知症に多くみられる初期症状に気づいてもらえやすくなります。

4.病院ではどのようにして認知症判定をする?

認知症の初期症状は、単なる「物忘れ」と間違いやすいものです。病院では、どのように認知症の判定を行っているのでしょうか。

4-1.「長谷川式認知症簡易評価スケール」などのテストを実施する

日本で広く利用されているのは、長谷川式認知症簡易評価スケールというテストです。これは記憶や簡単な計算ができるかを試すものです。

  • 本人の年齢
  • 今いる場所がどこか
  • テスト当日の年月日
  • 伝えた情報(単語)を覚えてもらいそれを同じように言う
  • 簡単な足し算引き算
  • 足し算引き算の前に覚えた単語を振り返る

など、比較的簡易なテストです。
この点数を目安に、認知症が現れているか、現れているとしたらどの程度かを判断し、その後必要と考えられる検査・治療法を検討します。

これをご家族が簡易的に実践できるよう、専用のスマートフォンアプリもありますが、あくまでも目安として利用すべきでしょう(HDS-R (改訂 長谷川式簡易知能評価スケール)│ファルメディコ)。

4-2.病院スタッフが認知症と疑われる人と接する

病院のスタッフが認知症を疑われる人と接すること自体、診断の一部です。その接し方には介護者が学ぶべき点も多いものです。たとえ認知症であっても「一人の人」であることは間違いがありません。人格を否定せず、片方ではしっかりと患者の状態を観察しながらサポートしているでしょう。

  • 答えや行動を促した後もせかさない
  • 質問の内容が正しく伝わっているかを確認する
  • いやな話題になったときには表情を観察し、話題を変える(特に計算テストの際。年齢的に学歴コンプレックスをもっている人も少なくないため)

4-3.CTやMRIなどの検査を行う

もしも、簡易的なテストで認知症が疑われる場合、CTやMRIでの検査が行われるでしょう。

認知症と呼ばれる症状の“モト”はいくつもあります。それを突き止めるため、脳内の状態を観察するのに用いられるのがCTやMRIです。脳の異常(萎縮・出血・血管の詰まり)をチェックし、認知症様の症状が何から来ているのかを特定するために行う検査です。

また、SPECTやPET診断では、脳の血流の状態を画像で確認することができます。血液が正しく行きかっている部位は脳が正常に働いているとされ、働きが低下している部分とは明らかに違いがわかることから、注目されている診断法です。

※認知症の種類と原因については、以下の記事もご参考になさってください。

こんなにあった!認知症の原因と病名、症状について

2017.06.28

まとめ

認知症の初期症状と考えられる状態や、「認知症の疑い」から「認知症と診断される」までの流れをご説明しました。ここで覚えておいていただきたいのは、以下の5点です。

  1. 認知症とは、物事を理解・判断し、行動や言葉、表情にし、それらを記憶するという人間ならではの高次な能力が欠けたり薄れたりしていくこと
  2. 家族だからこそ認知症の初期症状に気づける。感情・表情や言動の変化は、日ごろ常に接している人であればこそわかるもの
  3. 認知症の検査を勧めるときは「一緒に行こう」「健康でいて欲しい」ことを伝える。本人も不安に思っていることもあり得るので、無理をさせないように
  4. 簡易的なテストからCTやMRI、SPECT、PETといった画像診断へ至ることも。脳のどこに異常が起きているかを調べて認知症の原因をつきとめる
  5. 診断や検査に病院に行ったときには、病院のスタッフが患者とどう接しているかを観察してみる。介護者となったときのヒントを得られることもある