認知症サポーターとは?高齢化社会を支える役割と地域ネットの必要性

認知症

認知症を患ってしまった親御さんやご親族がいらっしゃる方にとって、「誤って家を一歩出てしまったら」という不安は常につきまとうものです。物事の正しい理解・判断が難しくなった認知症の方にとって、まちなかは危険がいっぱいです。いくら軽度の認知症だとしても、ときに自分の家に帰り着けないといったことが起こってしまいます。

また、介護をしている方にとって、日々の介護にはストレスがつきものです。24時間不眠不休で介護に当たることはできません。このように、介護される方・介護する方双方へのこころの支えはないのでしょうか。今回は、認知症患者とその家族を見守ってくれる認知症サポーターについてご説明いたします。

1.認知症サポーターとは?

認知症サポーターとは、認知症への正しい理解を身につけた人材のことを指します。講座開催は「特定非営利活動法人地域ケア政策ネットワーク」が行い、認知症の方が暮らしやすいまちづくりをするため、お住まいの地域の市町村が養成講座の事務局を担います。

まち全体で認知症の方やそのご家族を支える仕組みの一部が「認知症サポーター」で、彼らは自分自身にできる範囲内で手助けをしています。休日はもとより、仕事の際の服装規定に反しない範囲内で、仕事中でもオレンジ色のリストバンド(通称オレンジリング)を着けています。

1-1.認知症サポーターになるには

認知症サポーターになるには、認知症を正しく学ぶ必要があります。認知症とは何か、その症状、認知症の人との接し方など幅広い知識を身につけるため、「認知症サポーター養成講座」を受講します。

講座の実施・カリキュラムについて│特定非営利活動法人地域ケア政策ネットワーク

この講座を受講すれば、地域の見守り役となれると同時に、自身の家族への理解も深まることでしょう。地域の健康な方と接する際、認知症への偏見をなくすため心がけるべきこともわかります。

1-2.認知症サポーターの役割は?

認知症サポーターになったから、といって、何かしら特別な仕事をしなければならないわけではありません。もしも認知症と思われる方と出会ったら「お困りですか」と声をかけつつ、駅員や店舗のスタッフ、ときに交番など必要と考えられる人へつないであげるといった、ちょっとした配慮をするものです。

特別な仕事・作業というよりは、日常生活内での目配り・気配り、そしてちょっとしたお手伝いがその役割なのです。

また、地域で介護生活をスムーズに行えるよう国が構築しようとしている「地域包括ケアシステム」の中にも、老人クラブ・自治会・ボランティアなどが生活支援や介護予防を担うよう期待されています(地域包括ケアシステムの実現へ向けて│厚生労働省)。

1-3.認知症サポーターを育てる人は?

認知症サポーターを育成するためのカリキュラムは何となくわかっていただけたと思いますが、この講座で講師として活躍するのは「キャラバン・メイト」と呼ばれる人たちです。

キャラバン・メイトもまた、誰でもすぐになれる訳ではありません。認知症についてさらに深く理解しなければなりませんし、何かしらの問題・不安を抱える人を発見したときどこへ相談すべきなのかを知っておかなければなりません。この取り組みを広げるためにはどこへ持ちかければよいのか、認知症サポーター養成講座を企画するポイントの洗い出しなど、より実践的なグループワークも行います。

キャラバン・メイトを養成する研修は、都道府県や市町村、もしくは全国的な職域組織か企業などが実施主体となり実施します。企業がこの養成研修を実施するときは、日常の仕事の中で活かせるようその企業の特性を盛り込むことも可能です。

たとえば、

  • 金融機関
  • デパートや小売業
  • マンション管理会社

などが養成研修を実施しています。いずれも、私たちの日常生活に欠かせない企業・組織ですので、このような場でキャラバン・メイトが増えているのはとても心強いものです。

2017年(平成29年)時点でキャラバン・メイトは12,628人、実施企業・団体は14に上ります(全国規模の企業・団体での認知症サポーターキャラバン実施状況│特定非営利活動法人地域ケア政策ネットワーク)。

2.「認知症サポーター」は、住みよい地域を目指した国を挙げての取り組み

認知症サポーターは、「認知症にやさしいまちづくり」をするため、国を挙げて進められているものです。高齢化が進み認知症が他人事ではなくなった今、このような取り組みは認知症患者のみならず、その家族にとっても必要なことです。家族や介護の手助けをしてくれるヘルパー、入所・入居している施設だけでは認知症患者の完全な見守りは難しいものですので、まちにこのような認知症サポーターがいてくれることは、今後の社会全体にとっても大きな力となります。

厚生労働省では、「認知症サポーターに期待されること」として

1 認知症に対して正しく理解し、偏見をもたない。
2 認知症の人や家族に対して温かい目で見守る。
3 近隣の認知症の人や家族に対して、自分なりにできる簡単なことから実践する。
4 地域でできることを探し、相互扶助・協力・連携、ネットワークをつくる。
5 まちづくりを担う地域のリーダーとして活躍する。

これらを挙げています(認知症サポーターとは│厚生労働省)。

これは、世界でも類まれな高齢化率が進む日本において、とても大切なことです。ある調査では、いわゆる先進国の中で2005年(平成17年)に9.3%であったものが、2060年には37.1%に達すると推測するデータもあります(第1章 高齢化の状況(第1節 5)│内閣府)。

第1章 高齢化の状況(第1節 5)│内閣府

2060年というと、2017年現在20代の方が60代になる頃です。その頃になると5人に2人、言い換えると2.5人に1人は高齢者(65歳以上)ということになるのです。2015年では8.3%でしたので、37.1%という数がどれほどのものであるかが想像できるでしょう。

今現在も、介護の問題は深刻と受け止められています。将来を見越すと、やはりまち全体で高齢者(特に認知症患者)への対応が求められるようになることはすぐに理解できます。このような考え方のひとつが、認知症サポーターなのです。

もちろん、これから年齢を重ねていく私たちが自主的に「健康寿命」を保つよう心がけることも大切です。健康でいて、可能な限り「お世話する側」でいたいものです。家族が認知症になることも否定できない今、認知症への理解を深めるために、チャンスがあれば認知症サポーターの講座を受講するのもよいことでしょう。

※認知症予防に効果的とされる食品や生活習慣については、以下の記事もご参考になさってください。

この認知症サポーターへの関心は、若い方だけでなく、自分自身も高齢者とされる60代・70代の方にも広がっています。平成29年度末に発表された認知症サポーターの数を見ると、60代・70代、そして10代の方が多くいることがわかります(サポーターの性別・年代別構成│特定非営利活動法人地域ケア政策ネットワーク)。

サポーターの性別・年代別構成│特定非営利活動法人地域ケア政策ネットワーク

3.認知症サポーターは、今後さらに求められる

平成29年(2017年)、「第6 回認知症高齢者等にやさしい地域づくりに係る関係省庁連絡会議」が開催され、ここで認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)が発表されました。過去の認知症サポーターの数値目標(人数)は平成29年度末までに600万人と設定されていましたが、新オレンジプランでは2020(平成32)年度末までに1,200万人養成したいと引き上げられました。

これに併せ、既に認知症サポーターである人へのステップアップ講座を実施する予定です。より深く学ぶため、サポーター同士の情報共有・討議を取り入れ、地域や職域の実情に応じた取り組みに“進化”させ、関係機関との連携を深めることを目指すとしています認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)の数値目標の更新等に伴う変更について│特定非営利活動法人地域ケア政策ネットワーク全国キャラバン・メイト連絡協議会)。

4.時間の制約で認知症サポーターになれない方へ

もしも今、認知症サポーターへの関心をもたれていても、「仕事があって受講ができない」、「認知症サポーターになれても、日中は仕事でオフィスの中にいるので活動できない」という面で踏み切れない方は少なくないでしょう。そのようなときは、ある無料のアプリをスマートフォンにインストールするだけで地域の見守り活動に参加することができます。

ご高齢の方が身につける「ビーコン」が発する微小な電波をこのアプリが検知すると、その方のお世話を行っている見守り施設へ位置情報が送信される仕組みです。これならば、自治体や商店街などが設置を進めているであろうビーコン電波受信機(町かどセンサーや定点レシーバーとも呼ばれる)の充実を待たずとも、市民の手で自然な見守り活動ができます(見まもりビーコンネットのしくみ│有限会社加藤電工)。

見まもりビーコン│有限会社 加藤電工

このようなアプリは他にもありますが、町かどセンサーや定点レシーバーに依存するものも少なくありません。その点、このようなスマートフォン自体をセンサーとして利用するものは町なか施設の充実が難しいと考えられる地方ではとても有効です。今後、このようなアプリは増えていくことでしょう。

まとめ

これから本格的な高齢化社会を迎えるに当たり、身近に認知症患者がいない方であってももはや「他人事」といってはいられません。ご近所やまちなかで認知症とおぼしき人と出会うことも多くなってくるはずです。

このようなとき、どのように対処すればよいのかを事前に知っておくのはとても有益です。家族が認知症とされたときにも、その知識は役立つことでしょう。

今回は認知症サポーターについてご説明しましたが、皆さまにご記憶いただきたいのは特に次の5点です。

  1. 認知症サポーターとは、特定非営利活動法人地域ケア政策ネットワークが開催する講座受講でなれるもの。オレンジ色のリストバンド(オレンジリング)を装着し、それとわかるようになっている
  2. 認知症を学び、認知症患者と接するときの心構えや、介護をしている方の気持ちを理解しているのが認知症サポーター。60代・70代だけでなく、10代の認知症サポーターも多い
  3. 認知症サポーターに求められているのは、「日常生活の中でのさりげない気配り・配慮」。特別な仕事を与えられるわけではなく負担も少ないので、関心のある方は受講を
  4. 2060年には、日本の高齢化率は37.1%という推計が。たった40年で世の中は「2.5人に1人が高齢者」になるので、地域での支え合いの仕組みのひとつとして認知症サポーターへ期待が
  5. 認知症サポーターに興味はあっても時間的な問題などでなれない方は、スマホアプリで高齢者の見守りに参加できる。これからはIT技術で地域の見守り活動に参加できる場面も増える見通し

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