認知症の薬「代表例」と、介護者の心得4ポイントご紹介します!

認知症

もしもご家族のだれかが認知症と診断されたら、「その後の暮らしぶりはどうなるのだろう」と不安になりますね。症状が重くなっていくのをただ見守るしかないのか…と心配になってしまうかもしれません。

今では、認知症に対応する薬も使われるようになってきました。それらの薬について事前に知っておくことは、介護する方・介護される方にとって有益です。どのような薬が認知症に使われているのでしょうか。

今回は、認知症に用いられている薬の種類と、服用について注意すべきことなど介護者の知っておきたいポイントについて解説いたします。

1.「認知症」の原因によって使用される薬は異なる

認知症と聞くと、「ひどい物忘れ」「会話がかみ合わなくなる」「感情的になる」といったイメージを抱いておられる方も少なくないでしょう。それはあながち間違いではないのですが、認知症と診断された方がすべて同じ状態になるわけではありません。

というのも、認知症には様々な原因があるからです。つまり、認知症に用いられる薬は、原因に対応したものが用いられ、いくつもの種類がある、ということをご記憶ください。

※認知症の原因やその種類は、以下の記事もご参考になさってください。

2.認知症の薬は意外に数が多い

認知症に用いられる薬は、上でも触れたとおりその原因によって使い分けされます。その中でも代表的な薬をご紹介します。

2-1.アリセプト

アルツハイマー型認知症やレビー小体認知症の症状が進むのを抑制するために用いられる薬がアリセプトです。神経伝達物質であるアセチルコリンがアセチルコリンエステラーゼという酵素により減少することで認知症の症状を呈します。

このアセチルコリンエステラーゼの働きを阻害し、脳内の神経伝達を助けるのが、このアリセプトです。一般名はドネペジル塩酸塩で、今では同成分のジェネリック医薬品も多く出ています。2017年現在、アリセプトのジェネリックは101種もあります(診療報酬において加算等の算定対象となる後発医薬品(新規収載分)│厚生労働省)。

上のリンクを開き、「ドネペジル塩酸塩」でページ内検索をしてみてください。その数に驚かれることでしょう。

しかしながら、ジェネリック医薬品はあくまでアルツハイマー型認知症にのみ処方されるもので、レビー小体型認知症には用いられません。ときとしてジェネリック医薬品への切り替えを許可されないこともあります。

アリセプトは、錠剤・ゼリー状・ドライシロップ(水に溶かして飲む)・口腔内崩壊錠(唾液で解ける)と、そのバリエーションが多いのが特徴で、飲み込みが難しい、薬を飲むのをいやがるなど、患者さんの状態に応じて使用できます。

副作用は、

  • 消化器系のトラブル(吐き気・食欲不振・嘔吐・下痢)
  • 精神症状のトラブル(興奮・落ち着きがなくなる)

などがあります。

2-2.メマリー

進行したアルツハイマー型認知症の方に処方されるのが、メマリーです。脳内のグルタミン酸濃度が上がりすぎ、記憶などを司る神経の働きが鈍くなってしまう状態を抑制するために用いられます。記憶の問題だけでなく、興奮状態・徘徊などの他の症状を軽減させる効果があります。

一般名はメマンチンで、錠剤・口腔内崩壊錠があります。2017年現在、ジェネリック医薬品はありません。先に挙げたアリセプトとは働き方がちがいますので、「アリセプト+メマリー」で処方されることもあります。

副作用は、

  • 頭痛・眠気
  • 消化器系のトラブル(食欲不振・便秘)
  • 血圧上昇

などがあります。

2-3.レミニール

軽度・中度のアルツハイマー型認知症に用いられる薬です。錠剤・内服液(液体の薬がパウチ状の袋に充填されている)・口腔内崩壊錠のバリエーションがあり、患者さんの状態に合わせてその使い分けが決められます。

一般名はガランタミンで、脳内のアセチルコリン濃度を増やして情報伝達を促進する(アリセプトと同様の働き方)・アセチルコリンを受け取るアセチルコリン受容体の感受性を高める、のふたつの効果があります。

副作用には、

  • 消化器系のトラブル(吐き気・食欲不振・嘔吐・下痢)
  • めまい

などがあります。

2-4.リバスタッチもしくはイクセロン

軽度・中度のアルツハイマー型認知症に用いられる薬で、販売元によって、リバスタッチ(小野薬品工業)もしくはイクセロン(ノバルティスファーマ)と商品名が異なります。

一般名はリバスチグミンで、どの商品も貼り薬(パッチ)であることが特徴です。リバスタッチもしくはイクセロンは、脳内の神経伝達物質であるアセチルコリンを分解するアセチルコリンエステラーゼとブチルコリンエステラーゼの2種の酵素の働きを阻害することで、アセチルコリンの濃度をできるだけ高く保つことを目指した薬です。

副作用は

  • 皮膚のかゆみ・赤み(使用量が増えるとパッチの面積が増えるので、適宜貼る場所を変える)
  • 消化器系のトラブル(吐き気)

などがあります。

3.こころの症状に処方される薬

認知症は「物忘れ(記憶障害など・中核症状と呼ばれる)」以外の症状を呈することがあります。気持ちの落ち込み、不安、焦り、不眠など、「周辺症状」と呼ばれるものがそれです。この周辺症状に対し処方される薬もあります。

3-1.デパスもしくはワイパックス

不安に対抗するために、デパスやワイパックスなどが用いられることがあります。これらは抗不安薬というカテゴリにあり、脳の興奮を抑制することで、不安を和らげる効果を狙う薬です。

デパスは、一般的にエチゾラムと呼ばれます。寝つきが悪い人に処方されることもありますが、筋肉の緊張を和らげる効果もあるので整形外科でも用いられることがあります。また、ワイパックスは、一般的にロラゼパムと呼ばれます。いずれもリラックスと深い関係にあるGABAと呼ばれる物質の働きを増強させ、脳の興奮を穏やかにする仕組みです。

副作用には

  • 筋肉を緩めることからくるふらつき、ときに転倒から骨折
  • 一過性の健忘(飲んだ後の行動を忘れてしまっている)
  • 依存

があります。

3-2.マイスリーもしくはアモバン

睡眠のサイクルが狂ってしまった、もしくは寝つきが悪くなりイライラする、という方には、睡眠導入薬が処方されることがあります。マイスリーやアモバンはその代表的な薬です。

マイスリーは、一般的にゾルピデム酒石酸塩と呼ばれます。眠りに関係の深いベンゾジアゼピン受容体に働きかけ、効率の良い睡眠作用を得ようとするものです。アモバンは、一般的にゾピクロンと呼ばれます。作用については、マイスリーとほぼ同様です。

いずれも、血中濃度が一番高くなるのが飲んでから1時間程度、作用が続く時間が約3時間程度ですので、「眠りに入るまでがつらい」という方に処方される薬です。

副作用は

  • 一過性の健忘(飲んだ後の行動を忘れてしまっている)
  • 依存
  • だるさ・寝起きが良くない

などがあります。

4.服薬に関して介護者が気をつけるべきこと4つ

認知症とは、ご存じの通り物忘れがひどいことが特徴のひとつです。つまり、服薬に関しても場合によってはサポートが必要である、ということです。

4-1.薬を一包化してもらう

たとえば、1日3回・食後に飲む、とされている薬をきちんと飲めているか、逆に飲み過ぎてはいないかをチェックしてあげなければならないでしょう。もしも複数の薬を組み合わせて飲むように指示されたのなら、「一包化(一度に飲む薬をまとめてひとつの袋に入れてもらう)」するよう処方箋に書いてもらってください。医師が処方箋に一包化の指示を明記していなければ、薬剤師側で勝手に一包化することはできません。

一包化の指示のある処方箋を受け取った調剤薬局は、「朝」「昼」「晩」「寝る前」などと印刷した袋に薬を“セット”してくれます。一包化指示がなければ、薬をシートごとばらばらに受け取ることになり取り出すのが面倒ですし、誤ってシートから出さずに飲み込んで、食道や胃を傷つけるケースもあります。

一包化された薬は、特段に管理しやすくなります。朝食後には「朝」と印刷された袋の薬を飲み、昼食後には「昼」と印刷された袋の薬を飲み…と行動を定型化できるからです。これならば、飲み忘れ防止対策に一役かってくれます。

一包化された薬は、一般的に「お薬カレンダー」と呼ばれる壁掛けの袋にしまうことも簡単です。その日の朝の薬を飲んだか、昼の薬を飲んだか、もしくは余計に飲んでしまって不足分が出ていないかなど、一目瞭然となり、管理が楽になります。

4-2.薬を飲んだ後の様子を観察する

どのような薬でも、比較的効果のやわらかいもの・主成分含有量が少ないものからスタートするはずですが、新しい薬を処方されたときは特に服薬後の様子の確認が必要です。

飲んで数時間のうち、次の時間帯の薬を飲む前、など時間を追って様子を見ながらメモをしておくと、次の通院日に状態を報告することが容易になります。気分が悪そうだ、飲み始めてから数日間は便通がなかったようだ、など記録が残っていると、医師も薬の量を変えてみる・飲むタイミングを工夫するアドバイスをくれるなどの措置がしやすくなります。

4-3.飲み忘れたときどうすればよいのかを聞いておく・お薬手帳を必ずもらう

とはいえ、介護をしている方も人間です。忙しかったり、ご自身の体調が悪かったりなどで、薬を飲むよう促すことを忘れてしまうこともあるでしょう。そのようなとき、どうすればよいのかを事前に聞いておくのも重要です。朝飲むべき薬を忘れたとき、昼の分と一緒に飲んでも問題ないのか、といった風にです。

薬には飲んでから体内をめぐる量がピークに達するまでの時間と、その効果が薄れてくる半減期があり、薬の種類によりそのタイミングは異なります。これをきちんと“計算”して組み合わせたものが処方箋ですので、飲むタイミングを誤れば、身体的問題を引き起こすこともあります。

このことを考えると、旅行や通院など、家をあける期間中に必要な分をきちんと携えて出発することも重要といえます。また、薬を紛失しないとも限りませんので、かかりつけ医院の診察券と保険証、お薬手帳なども念のために持っておくことをおすすめします。

紛失などで同じ薬を再度出してもらう場合はすべて自己負担とはなりますが、出先の同様の医院に相談をすることで、同じまたは同等の薬の処方箋を出してもらうという方法が取れるでしょう。また、あまり考えたくありませんが、何らかの災害に巻き込まれたときもお薬手帳があれば、失った分の薬もスムーズに手に入る・服薬指導をしてもらえるという大きなメリットがあります東日本大震災時におけるお薬手帳の活用事例│公益社団法人日本薬剤師会)。

4-4.認知症やその関連症状は薬での完治はできないことを知っておく

残念なことに、薬で認知症を治すことはできません。認知症の進行を遅らせる・関連した症状を抑制することが主なものです。このことを充分に理解しておけば、

  • 予防
  • 早期発見

が何より重要とわかります。薬には何らかの副作用があります。できれば飲まないに越したことはありません。また、持病をお持ちの方なら、持病の薬との飲み合わせの問題で調整が難航することも考えられます。

可能な限り、薬に頼らないことを目指すのが最善、といえるでしょう。

※認知症の予防については、以下の記事もご参考になさってください。

まとめ

認知症で用いられる薬は、主な症状(物忘れ)への処方薬・こころのトラブルへの処方薬と大きくふたつに分けられています。患者さんの状態に合わせて、単独で、もしくは複数の薬を組み合わせて使うことがありますが、その際に注意しなければならないことも多くあります。

今回は認知症の方に処方される薬についてご説明しましたが、特に以下の5点が重要です。

  1. 認知症の薬は案外種類が多い。認知症の原因により選定される上、飲み込みが難しい・薬を嫌がるなど、患者さんの状態に合わせられるよう、ゼリー状・ドライシロップ・口腔内崩壊錠(唾液で解ける)などのバリエーションがあるのがその理由
  2. ときとして、パッチタイプ(皮膚に貼るタイプ)の薬が処方されることも。飲み薬と異なり、皮膚に貼ることから、皮膚に赤みが出ていないかと毎回状態を観察しながら貼る場所を変更していく工夫も必要
  3. 脳の不必要な興奮などから不安や不眠を訴える場合は、抗不安薬や睡眠導入薬が出される。ふらつきや一過性の健忘などが副作用として現れることがあるので、日中には倒れないよう見守りをし、睡眠導入薬はベッドに入る直前に服用を
  4. 介護をする人は、様々な観点から要介護者のサポートを。飲み忘れチェックのため薬の一包化の依頼・服薬後の状態の観察・飲み忘れたときの対処の仕方の理解・お薬手帳に処方薬の記録を残しておくことなど
  5. 認知症は薬で完治できるものではない。薬は飲まないで済むのであればそれに越したことはないので、予防・早期発見を心がける。特に他の持病がある場合、飲み合わせの問題で薬の選択肢が狭まってしまう

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