介護職は離職率が高い?その答えと良い事業所を探す3つのヒントとは

介護の仕事は、「3K(きつい・汚い・危険)」と言われることがあります。ときには、「4K(きつい・汚い・危険・給料が安い)」と語られるケースもあります。

そのためか、介護の仕事は離職率が高いといわれます。それは事実なのでしょうか。もし離職する人が多いのだとするとその理由は何でしょうか。これから介護の仕事に就きたい・介護の世界へと転職したい方に向けて解説します。

1.大学卒業者3年以内離職率統計・産業別で「医療・介護」は5位

厚生労働省が平成29年9月に発表した「新規学卒就職者の離職状況(平成26年3月卒業者の状況)」では、平成26年に大学を卒業した人が3年以内に離職をした離職率の高い上位5産業は以下の通りです。

  • 宿泊業・飲食サービス業=50.2%
  • 生活関連サービス業・娯楽業=46.3%
  • 教育・学習支援業=45.4%
  • 小売業=38.6%
  • 医療・福祉=37.6%

医療や介護の仕事が離職率の高い上位5位に入ってこそいますが、他の業種がいわゆる「3K」とされるものではないことは注目に値します。つまり、3Kだから離職率が高い、という公式は成り立ちません。では、同じ調査の中の「新規高卒就職者の離職状況│厚生労働省」ではどうでしょうか。

  • 宿泊業・飲食サービス業=64.4%
  • 生活関連サービス業・娯楽業=59.4%
  • その他=58.3%
  • 教育・学習支援業=56.0%
  • 小売業=50.4%
  • 建設業=47.7%
  • 医療・福祉=46.9%

と、医療・福祉が7位に入っています。データ上では離職率が全産業平均を上回ってはいるものの、決して離職率トップクラスではないことがわかります。

離職率とは
特定の期間中に何人がその職を離れたかを示す率。計算に用いる期間はまちまちなので注意が必要。
対義語は「入職率」。
上記の厚生労働省の統計では、3年間を振り返って計算している。

2.介護の現場で体感する離職率の高さの理由・原因は?

上記のように、産業別・大学卒/高校卒の離職率を見ても離職率が突出している訳ではないのに、離職率が高いと感じられるのはなぜでしょうか。それは以下のような側面から見たときのことです。

2-1.事業所の規模・事業開始年数により離職率に差が付く

公益社団法人介護労働安定センターが公表した「平成28年度介護労働実態調査結果について」の結果を見ると、離職率の高い事業所の特徴が見えてきます。

平成28年度介護労働実態調査結果について│公益財団法人介護労働安定センター

訪問介護員を見ると20人以上49人以下の事業所での離職率が高く、その他(正規職員の介護職員+非正規職員の訪問介護員+非正規職員の介護職員)では、19人以下の事業所での離職率が高いことがわかります。人手不足によるストレスや勤務時間の長時間化が慢性化しているのが容易に想像できます。

しかしながら、介護事業所がその事業を開始したときからの年数により見た離職率は次のようになっています。

平成28年度介護労働実態調査結果について│公益財団法人介護労働安定センター

調査対象の事業所の事業年数を「3年未満」「3年以上5年未満」「5年以上」に分類したとき、「5年以上」の事業所では、圧倒的に離職率が減っています。雇用する側である事業所も運営に慣れてきて、サービス利用者・従業員への対応も適切に取り仕切ることができるようになっていると読めます。

介護を求める方は年々増えていますので、それを受け止めるため民間企業が福祉事業に新規参入するケースが増えています。そのようなケースでは小規模から始めることも少なくなく、そのため離職率が高くなってしまう側面があります。

2-2.人材不足が「心身疲労」を招く

平成28年度介護労働実態調査結果について│公益財団法人介護労働安定センター

この図からは、人材不足の理由が離職率にあるのか、入職率の低さによるものかはわかりません。しかしながら、人手が足りないと感じている事業所は62.6%と高い数字を示しています。この人材不足が職員の悩みにつながっています。

同じ調査で、雇用される側の悩み・不満などについての設問に対し、

  • 人手が足りないと感じる=53.2%
  • 仕事内容のわりに賃金が低いと感じる=41.5%
  • 有給休暇が取りにくいと感じる=34.9%
  • 身体的負担が大きいと感じる/体力に不安がある=29.9%
  • 精神的にきついと感じる=28.1%

が上位5位となりました。

「2-1.事業所の規模・事業開始年数により離職率に差が付く」でも触れたとおり、比較的新しい事業所・少ない人数で仕事を行う場合、よほど手馴れた人が指示系統に座らない限り、利用者や従業員への対応、適正に仕事を回すことが難しいものは想像に難くありません。

人が足りない、仕事の内容に対し賃金が低いというのは、必ずしも文字通りのことではなく、勤務する事業所やその仕事の内容・勤務時間によりけり、とも理解できます。

たとえばどんなハイレベルな資格を持っていても、豊かな経験を持っていても、人員がギリギリの切羽詰った職場ではそのスキルをうまく発揮できないでしょう。そして、そこにいるスタッフ全員が同じ「もやもや」「イライラ」を持っていると、さらにつらさが増していきます。

2-3.介護の仕事には人間関係トラブルも少なくない

介護の仕事とは、常に人と接していなければ成り立ちません。施設やサービスの利用者はもちろんのこと、事業所で共に働く人たちと正しい連携ができなければ、適切な仕事にはなりません。しかしながら、この「人」が仕事のやりにくさに通じ、離職率を上げている面もあります。

介護のみならずどの業界でも同じですが、小規模な事業所では、何かが起きたときだれがどう対処するなどのいわゆるマニュアルが明確でないことも少なくありません。そのため、何かしらのトラブルが発生したときにそれに誰が対応するのか、その後どのように報告・改善するのかが不明瞭で結果的にうやむやになり、ときとして個人レベルでの“犯人捜し”が始まることも珍しくはありません。

それでなくとも、お手伝いすべき要介護者に寄り添うことはそう簡単なことではありません。ときとしてサービス利用者・入所者との間に軋轢が生じることもあり得ます。そのような環境にあって、スタッフ同士が協力し合えないのなら、自然と離職率は高くなります。

2-4.「無資格・未経験者OK」がつらさにつながることも

これまで見てきた統計結果を理解した上で、介護の仕事の求人の多さに目を向けてみましょう。介護とは、急速に増える高齢者の暮らしに寄り添うために欠かせない重要な仕事ではあります。しかしながら常に求人情報を出しているような人手不足の事業所が、「無資格・未経験者OK」としていても、丁寧に仕事を教えてもらえることは滅多にないことはすぐに想像がつきます。

そのような職場では表面的なことしか指導してもらえず、「後は自分でマニュアルを読んで」と放り出されたり、イレギュラーなことが起きたとき相談に乗ってもらえないといったこともあり得るでしょう。いきなり夜勤を命じられたりすることも考えられます。

そのような状態を、新人いじめや派閥、職員潰し合いなどといった言葉で揶揄することもあります。

介護の仕事は、ときとして人の命に直結することもあります。そのような職場で仕事を教えてもらえない・相談に乗ってもらえないとするなら、その職場は離職率が高いことでしょう。上でご紹介した調査で、「前職も介護関係の仕事だった人が仕事を辞めた理由」の上位5位は、

  • 職場の人間関係に問題があった=23.9%
  • 結婚や出産、妊娠、育児=20.5%
  • 法人や事業所などの運営のあり方に不満があった=18.6%
  • 他に良い職場がみつかった=18.2%
  • 将来の見込みが立たなかった=17.7%

となっていて、人間関係や職場の姿勢に不満があり、良い職場を見つけて新たに介護の仕事を始めていることがわかります。

2-5.「介護職に就く覚悟が足りない」という批判は間違い

ときに、職場で「介護職に対する覚悟が足りない」、「介護という仕事を甘く見てないか」という批判を受けることがあるかもしれません。確かに一部の人はそうかもしれませんが、大多数の方は介護という仕事の尊さや大変さを理解して職に就いたはずです。

人手不足に加え、人間関係の濃厚な職場は、どれだけタフな方にとってもストレスを感じさせるものです。事業所のルールに則って精一杯の努力をしているのであれば、安易な批判に耳を貸す必要はありません。

とはいえ、仕事のストレスと批判によるストレスで心身ともに疲弊し、いわゆる「燃え尽き症候群(努力したのに失望を感じやる気を失う)」、「うつ(自責の念に駆られる)」の前兆を感じているのであれば、深刻になる前に職場を去ることも検討しなければなりません。

3.離職率の低い「良い事業所」を探すヒント

離職率の高い職場は、長くは勤められない何がしかの問題をはらんでいます。これを避け、離職率の低い職場を選びたいとお考えのときは、次のポイントに着目してみてください。

3-1.民間企業を選ぶなら、サポート体制や口コミをチェック

介護事業に関する法人格にはいくつかのパターンがあります。民間企業、社会福祉協議会、社会福祉法人、医療法人などがそれです。

平成28年度介護労働実態調査結果について│公益財団法人介護労働安定センター

この図を見ると、民間企業の離職率が高いことがわかります。本当ならば、離職率の低い社会福祉協議会、社会福祉法人、医療法人の運営する事業所を選びたいところですが、離職率が低いということは、求人そのものがなかなか出ないということでもあります。

法人格とは
権利や義務の主体を指し、「人」「法人」に認められるもの。
株式会社・合資会社・一般社団法人・特定非営利活動法人・社会福祉法人などがある。

それであれば、民間企業でも「口コミのよいところ」「サポート体制の整っているところ」を選んで応募しなければなりません。これについては、企業(事業所)の口コミサイトを利用すれば、ある程度理解できます。

※口コミは、どの立場から見るかで大きく変わります。すべての面で満点を得る事業者はないことにご注意ください。

3-1-1.となりの介護

となりの介護

都道府県別、サービスから、気になる事業所の口コミを見ることができます。介護サービスの質、雰囲気・人間関係、給与・賞与などの点から「気になる」「良い」の評価をチェックできます(となりの介護)。

3-1-2.介護のほんね

介護のほんね

介護施設への入居を検討している方向けのサイトですが、ケアの状況や職員の雰囲気などは大まかに理解でき、参考にすることができます(介護のほんね)。

3-1-3.カイシャの評判

カイシャの評判

介護に特化されてはいませんが、気になる事業者があればこのサイトで一度調べてみることもおすすめします。大手事業者ならば、その名がみつかることでしょう。「仕事を通じて成長できた点」「給与・年収について」「勤務時間・休日休暇について」などの点から口コミを読むことができます(カイシャの評判)。

3-2.歴史ある大手企業の求人を探す

比較的離職率の高い介護業界にあって、長年介護事業所として事業を続けている歴史ある会社からの求人があれば、積極的にチェック・応募してみてください。事業を長く続けていられる理由は、経営努力もそうですが、職員の力を底上げする研修制度などのサポート体制が充実しているからです。確かに、経験○年以上、要資格などハードルが高めのケースもありますが、チャレンジする価値は充分にあります。

3-3.介護職に特化した転職サイトを利用する

もしも離職率の低い事業所を探しているのであれば、介護の仕事に特化した転職サイトを利用するのもよいものです。中には介護人材派遣会社自身が手がけているサイト、介護施設・介護事業を行っている会社のサイトもあり、マッチングと共にスキルアップ(資格取得)のサポートをしてくれることもあります。

特に転職エージェント(担当者)を付けてくれるサイトであれば、あなたの悩みからどのような職場が合うのかをアドバイスしてくれたり、キャリアアップするためのプランを考えてくれたりするうえ、有利な転職へと導いてくれます。もし、チャレンジしようとしている事業所の離職率について気になるのであれば、正直に質問してみるとよいでしょう。

転職は繰り返す度にゼロからのスタートとなるうえ、事業所側から見るとマイナス点と映ることもあります。転職回数を増やさず、より良い職場選びをするために、介護に特化した転職サイトはとても嬉しいものです。

※介護の仕事への転職については、以下の記事もご参考になさってください。

介護の仕事の給料を上げたい!そんなときは2つの点から仕事を見直して!

2017.10.13

介護の仕事の転職、そのあり方や転職のために使いたいもの3種教えます!

2017.10.06

まとめ

介護の仕事はつらい、離職率が高くて当然だ…。そのような思いで日々職場に向かってはいませんか。これまでに見てきたように、介護の仕事は「3K」ともいわれますが、それらは人手不足が原因であることが多いものです。もしもご自身の勤務する事業所の離職率が高いのであれば、それなりの理由があるはずです。

今回は介護の仕事と離職率、もしも職場に行くのがつらくなったときの選択肢のひとつである転職についてご説明しましたが、特に強くお伝えしたいのは以下の5つのポイントです。

  1. 厚生労働省の調査では、大学卒業後3年間で離職した人を産業別でみたとき、医療・福祉は「5位」。上位の4位まではいわゆる「3K」産業ではない
  2. 介護の仕事の中で離職率が多いのは、「訪問介護で20~49人」「その他で19人以下」の事業所。小規模な事業所で離職率が高くなる傾向に
  3. 事業所の事業開始からの年数も離職率に影響を及ぼす。「3年未満」「3以上5年未満」「5年以上」では、「5年以上」で離職率が減る
  4. 人手不足に加え、要介護者・介護職員との人間関係が濃いのが介護の仕事の特徴。人間関係のストレスが離職率の上昇を招くことがある
  5. 介護の仕事を続けたいのなら離職率の低い職場へ。口コミサイトで事業所について調べ、転職エージェント(担当者)のいる転職サイトを利用すると有利に事を運べる