介護費用はいくらかかる?平均額と平均期間、それに対抗する方法

介護費用はいくらかかる?平均額と平均期間、それに対抗する方法

介護と聞くと、頭によぎるのが「費用」と「誰が看るのか」という問題です。介護に当たるであろう方の世代を考えると、働き盛り・子育て中ということも少なくはなく、外部サービスを利用せざるを得ないケースもあります。このようなとき、「介護のすべて、もしくは一部を介護サービスに頼るならいくらかかるのだろう」という質問が生じます。今の親の年金・貯蓄でまかなえるのでしょうか。または、ご家族で費用負担できるものなのでしょうか。このページでは介護費用にまつわる「知っておきたいこと」についてご説明します。

1.介護費用、なににいくらかかる?

介護を受ける方の状態について「段階」があることは、「親の介護は誰が見る?義務は誰にある?解決策5つ」のページでご説明しました。介護保険サービスを利用することで、自己負担額は1割ないしは2割に収まることが多くあります。

※お住まいの自治体により、金額は多少変化します

1-1.【まず確認】世帯の所得額により、自己負担額の上限がある

自己負担額が1割ないしは2割といっても、そもそもの所得(年金のみの方含む)が低い場合、その支払いもつらいものとなってしまいます。同じサービスを受けるのに、収入が低い人は「何かを我慢をしろ」ということはなく、所得額によって支払うべき上限額が定められていますので、大きな不安はありません。

年間所得を5段階に分け、それによって負担額が高額になってしまったときの支払い上限が定められています。

※自治体の福祉課などへ相談し、事前申請が必要です

  • 第1段階=生活保護を受けている方、もしくは世帯の全員が住民税非課税であるなど/上限額15,000円
  • 第2段階=世帯の全員が住民税非課税、なおかつ合計所得と課税年金額の合計が80万円以下/上限額15,000円
  • 第3段階=世帯の全員が住民税非課税、なおかつ合計所得と課税年金額の合計が80万円を超える/上限額24,600円
  • 第4段階=世帯に市町村民税を課税されていて、課税所得額が145万円未満/上限額37,200円
  • 第5段階=世帯に市町村民税を課税されていて、課税所得額が145万円以上/上限額44,400円

この制度を、「高額介護サービス費支給制度」と呼びます(要介護1~5の方への居宅(在宅)サービス│和歌山県みなべ町)。

1-2.介護の期間はどのくらい?期間からみる介護費用は?

介護の期間はどのくらい?期間からみる介護費用は?

介護保険を利用した際の上限額を知ったところで、次に平均的な介護期間にも目を向けてみましょう。ある調査によると、介護の平均的な期間は4年11カ月とされています。しかしながら、10年以上と回答した方も15.9%を占めました(介護にはどれくらいの年数・費用がかかる?│公益財団法人生命保険文化センター)。

もしも平均的な「5年(60カ月)」と仮定し、上記第5段階の上限額「44,400円」に収めるとしても、

  • 44,400円×60カ月=266万4,000円

が必要です。

また、その他にも要介護者に食べやすい食事を準備するため食費が上がったり、他の病気にかかったりすることを考えると、少なくとも300万円の貯蓄(ないしは介護を受ける方の年金や貯金)が必要、といえます。

また、同じ調査では、介護にかかった月額費用も公開していて、

  • 支払った費用はない=5.2%
  • 1万円未満=4.9%
  • 1万円~2万5千円未満=15.1%
  • 2万5千円~5万円未満=10.2%
  • 5万円~7万5千円未満=13.8%
  • 7万5千円~10万円未満=7.1%
  • 10万円~12万5千円未満=9.8%
  • 12万5千円~15万円未満=3.4%
  • 15万円以上=16.4%
  • 不明=14.1%

となっています。これを平均すると「7.9万円」という額が導き出されます。

この平均月額を、先の5年(60カ月)にかけると、

  • 79,000円×60カ月=474万円

は用意しておかなければならない計算となります。500万円は覚悟しなければならないようです。

1-3.介護サービス1回あたりにかかる費用は?

お住まいの地域を管轄する自治体により多少の差はありますが、ある市で設定されている「サービスごとの自己負担額」をご紹介します。これらの介護サービスは、ケアマネージャー(介護支援専門員)との相談で、要介護者やご家族の状況によって必要なものを組み合わせ、利活用することとなります(要介護者が受ける介護保険サービス│富山県魚津市)。

【通所】

  • デイサービス(通所介護)=要介護1の場合614円/要介護2の場合722円/要介護3の場合830円/要介護4の場合938円/要介護5の場合1,046円(食費やリハビリ、入浴支援を受けた場合は自己負担)
  • デイケア(通所リハビリテーション)=要介護1の場合769円/要介護2の場合923円/要介護3の場合1,075円/要介護4の場合1,231円/要介護5の場合1,385円(食費は自己負担)

【在宅】

  • ホームヘルパー(訪問介護)=入浴や食事などの身の回りのこと(身体介護1時間未満421円)/調理や洗濯など生活のこと(生活援助45分未満199円)
  • 訪問入浴介護=1回1,276円
  • 訪問リハビリテーション=20分1回302円
  • 訪問看護=30分未満392円~463円
  • 在宅療養管理指導=医師や歯科医師による指導1回あたり503円
  • 短期入所生活介護=要介護1の場合667円/要介護2の場合738円/要介護3の場合810円/要介護4の場合881円/要介護5の場合1950円(滞在費・食費などは自己負担)
  • 短期入所療養介護=要介護1の場合858円/要介護2の場合907円/要介護3の場合969円/要介護4の場合1,022円/要介護5の場合1,076円(滞在費・食費などは自己負担)

2.介護保険と医療費控除の関係は?扶養していないときはどうなる?

先に少し触れたとおり、介護とは別に病気にかかったときや、介護であっても「療養上の世話の対価に相当する部分の金額」は医療費控除の対象となります(介護保険サービスの対価に係る医療費控除について│国税局)。

2-1.医療費控除の対象になるもの

医療費控除の対象になるもの

たとえば、以下のようなものは医療費控除の対象となります。

  • 訪問看護
  • 訪問リハビリテーション
  • 居宅療養管理指導
  • 通所リハビリテーション
  • 短期入所療養介護

これらは、自宅にいながらも保健師や看護師の世話を受けたこと、理学療法・作業療法リハビリテーションを受けたこととみなされ、医療費控除の対象となる可能性があります。

また、いわゆる「寝たきり状態」であっても、在宅療法を行うため医師の診療を受けていること、在宅介護サービスを提供する施設(供給主体)が医師との連携を取っている場合は、

  • 訪問介護や訪問入浴介護

も含まれる可能性があります。

医療費控除については、要介護者・要支援者の状態や収入との兼ね合いがありますので、介護サービスを利用した際の領収書を必ず保管しておき、確定申告を行います。

2-2.扶養していない家族の場合

仕事や教育の都合で別の場所にばらばらに住んでいるご家族は多いものです。それでも、週末には実家に帰り親の介護をしている、小額ずつでも生活費や療養費などを仕送りしているというケースがあるでしょう。このような場合、一見「扶養していない(扶養:自力で暮らせない人を養うこと)」ように見えますが、場合によっては「生計を一にする」家族としてみなされることがあります(No.1180 扶養控除│国税局)。

扶養しているかどうかの一側面である「生計を一とする」とは、

「生計を一にする」とは、必ずしも同居を要件とするものではありません。例えば、勤務、修学、療養費等の都合上別居している場合であっても、余暇には起居を共にすることを常例としている場合や、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合には、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。

なお、親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、「生計を一にする」ものとして取り扱われます

と定義されています。遠くにいる親に資金的な援助をしているときもまた、控除の対象となる可能性があります。

親御さんの側で医療費控除申告をするのが得か、仕送りをしている子の側で医療費控除申告をするのがいいのかは状況により異なります。送金の記録(通帳など)、休暇に帰省した際の旅費領収書など、介護への参加を客観的に証明できそうな資料をまとめて、税理士や税務署へ相談に行ってみてください。

3.自分が介護される側になったときのための「保険」

親の介護にかかる費用の例を目の当たりにしたとき、介護をする側となるであろう30~50代の「子世代」もまた、自分の介護費を準備しなければと決意するものです。とはいえ、年金支給年齢は65歳からと引き上げられましたし、もし仮に前倒し支給を希望すれば受け取れる年金額はダウンします。このような状況で、自分の老後をどう「デザイン」すればよいのでしょうか。

3-1.要介護と認定されたときのためにかける保険

民間の保険会社は、自分自身が要介護と認定されたときのための商品を発売しています。要介護認定を受けたときにまとまったお金がおりる「一時金タイプ」、年金のように月々お金が口座に振り込まれる「年金タイプ」が代表的です。中には、要介護と認定された段階で保険料金不要となるものもあります(あんしん介護│朝日生命)。

もしも、自らの介護に備えての貯蓄を積極的に行えない、と判断したときには、このような保険商品について調べてみるのもよいでしょう。いわゆる「掛け捨て(解約返戻金なし)」にすることで安く設定されているものがほとんどですので、できるだけ若いうちに契約をし、月々の保険料を低く抑えることがポイントです。

3-2.働けなくなったときのためにかける保険

年金を受給できる年齢より前に倒れてしまったとき、私たちはどのように生活を支えればよいのでしょう。生命保険は死んだときに家族に何かを残すもの、医療保険は病気やケガでかかる治療費をカバーするものです。これに加え、最近では働けなくなったときのため、生活費をカバーする「就業不能時」のための保険を用意している会社が増えました。

仕事ができなくなれば、暮らし向きは大きく変化します。家賃、食費、電気代…ただ家でじっとしているだけでも出てゆくお金は大きく、これらをカバーするための貯金がどれだけ必要か誰にもわかりません。このような生活費支出をサポートしてくれる保険もありますので、年金支給年齢までの間かけておくのも一考です。

3-3.使い道が自由な「貯金」がなにより便利

使い道が自由な「貯金」がなにより便利

保険商品掛金は半強制的に口座から引き落とされていきますので、「固定費」として家計に組み込めるという便利さはあります。しかしながら、本当に必要なときに必要なものに使えないという不便さも持ち合わせています。保険のお金を手にするための手続きは煩雑ですし、免責期間(保険金がおりない期間)があったりと、「自由」とは言いがたいものです。

即座に、思ったとおりに使えるものは、やはり「貯金」であることに間違いありません。老後資金のために「収入の1~2割を貯金に回そう」と提唱するファイナンシャルプランナーも多いことはご存じかもしれません。やはり、現金の便利さは何にも勝る、ということでしょう。目的が自分の介護費用であれ、医療費であれ、自由に使えるのです。

給与振込口座に自動積立預金をセットするのがよいかもしれません。月々1万円でもかまいません。最初から「ないもの」として家計の予算組みをし、その生活レベルに慣れたら、数年後には追加でまた1万円(計2万円)と、預金額を増やしていくのもよいでしょう。

4.国の視点からみる「要介護者」のすがた

厚生労働省は、毎年、「介護保険事業状況の報告」をWEBサイトで公開しています。2017年5月現在、直近の「平成26年度」分を見てみると次のような要介護者のすがたが見えてきます(平成26年度介護保険事業状況報告(年報)のポイント│厚生労働省)。

4-1.平成26年に比べ、平成27年では要介護・要支援認定者数は22万人増

厚生労働省の資料によると、平成26年3月末には584万人であった要介護(要支援)認定者数は、平成27年3月末現在では606万人となりました。前年度比で22万人の増加、3.8%増です。

うち、要介護・要支援の内訳は、

  • 要介護5=9.9%
  • 要介護4=12.0%
  • 要介護3=13.0%
  • 要介護2=17.5%
  • 要介護1=19.3%
  • 要支援2=13.8%
  • 要支援1=14.4%

となっています。認定者数は年々増加の一途です。

4-2.サービス受給者数構成比では「居宅サービス」が最大

厚生労働省公表の同じ資料では、1カ月平均のサービス受給者数が、平成25年度では482万人であったのに対し、平成26年度では503人となっています。対前年度比で21万人増加、4.3%増です。

  • 居宅サービス=74.5%
  • 地域密着型サービス=7.7%
  • 施設サービス=17.9%

※重複利用あり

となっていて、7割を超える要介護者・要支援者が主に自宅での介護を受けていることがわかります。

4-3.介護保険給付費は約9兆円

介護保険の給付費(利用者負担を差し引いた額)は、平成25年度の累計で8兆5,121億円に対し、平成26年度の累計は8兆9,005億円と、対前年度比で3,885億円増加しています。

給付費の構成(1カ月平均)は、

  • 在宅サービス=3,814億円(54.6%)
  • 地域密着型サービス=793億円(11.4%)
  • 施設サービス=2,376億円(34.0%)

となっています。

先のサービス受給者構成と対比すると、やはり、施設サービスを受けなければならない重度の方に費用がかかっている、という自然な割合となっています

5.介護費用について、親と自分のためにするべきこと

介護費用について、親と自分のためにするべきこと

親の介護という大役を担いながら、自分自身の介護費用を自ら積み立てておかなければならない30~50代の働き盛り世代。これまでに見てきた各種統計やデータが物語るように、「遠い誰かのこと」ではなく、「自分自身のこと」として、明日からでもできることに取り組まなければならないとわかります。現在と未来は、私たちの今の備えが支えます。

もしも現在、親御さんの介護で金銭的にも体力的にも苦労をしそうだ、と想定される方は、同じ思いをお子さんにもさせないよう、今から少しずつでも準備をしておきましょう。

まとめ

介護費用の目安や介護保険と医療費控除のこと、私たちが今からしなければならない備えについて重要なことをお伝えしてきました。このページでは以下の5つのことを覚えておきましょう。

  1. 自己負担額は、世帯の所得額により上限がある。これを「高額介護サービス費支給制度」と呼ぶ
  2. 介護の平均的な期間は約5年。これに統計上「1カ月に要した費用7.9万円」をかけると、最低でも474万円かかる
  3. 「療養上の世話の対価に相当する部分の金額」は医療費控除の対象。介護に要した出費の領収書は保管しておき、税理士や税務署に相談する
  4. 自分の介護費は自分で準備する。要介護と判断されたときのための保険・就業不能となったときのための保険もあるが、預貯金のほうが有利なことも
  5. 平成27年の要介護・要支援認定者数は前年度比で22万人増。他人事とはいえない現在、今からできる備えを