住宅ローンは繰り上げ返済すべき?2つのポイントから得か損かを考えて!

老後資金

老後の生活費を大きく左右するとされる住宅ローン。年金受給のみ、ないしは追加で働くにしても、月々万の単位のお金が出て行くのはつらいものです。これを避けるため、これまでの預貯金や退職金を使い住宅ローンの繰上げ返済をしたいと考える方も決して少なくはないはずです。

住まいにかかる費用をできるだけ軽くし、月々の生活費を圧迫したくないと思っておられる方とご一緒に、様々な側面から住宅ローンの繰上げ返済と老後の生活資金についてチェックしてみたいと思います。

1.【要シミュレーション】ざっくりとイメージ・手持ちの預貯金とのバランスを見る

住宅ローンの繰上げ返済には、当然「原資」が必要です。老後(リタイヤ後)に住宅ローンの繰上げ返済をしようとする場合、これまで貯めてきたお金からそれを行うことになるでしょう。となれば、貯蓄を切り崩すことになりますので、老後に必要となるかもしれない不意の出費を賄えなくなってしまう可能性も否定できません。

総務省の行った調査では、60歳以上・二人以上世帯の貯蓄額は1,551万円、負債額は810万円とされています(世帯属性別にみた貯蓄・負債の状況│総務省)。この数字をそのまま受け取り、預貯金で住宅ローンを含む負債を返済するとなると、

  • 【自由に使えるお金】741万円=1,551万円(貯蓄額)-810万円(負債額)

となり、老後の「いざというとき」を支えるお金は741万円しかないことになります。

世帯属性別にみた貯蓄・負債の状況│総務省

それでなくても、一般的な老後資金は“不足気味”とされています。せっかく貯めてきたお金を切り崩すことがベストなのかどうか、少し立ち止まって考える必要があります。まずは、住宅ローンの繰上げ返済を“シミュレーション”してください。大手の銀行であれば、公式サイト内に繰り上げ返済シミュレーションを行えるページを設けてありますので、それらを使ってみてください。

もしくは、スマートフォンやタブレットでシミュレーションできるアプリケーションを利用するのもよいでしょう。

※画像をクリックするとアプリケーションダウンロードページへ移動することができます。この情報は2017年9月現在のものです。

  • ローンメモ繰上住宅ローン繰り上げ返済シミュレーター=繰り上げパターンを最大5つ保存できる

【iOS用】

【Android用】

  • 住宅ローン返済の軌跡=任意のタイミングで繰り上げ返済したときどうなるのかを表示、メールなどで他の端末とデータのやり取りが可能

【iOS用】

【Android用】

keisan〈繰上げローン返済〉│カシオ

2.住宅ローン繰り上げ返済に関連する2つのチェックポイント

預貯金や年金受給だけで生活を支える老後、「できれば早く住宅ローンを払い切ってしまいたい」と願うのは自然なことです。住宅ローンの繰上げ返済をすべきかどうかの判断材料となるのは、次の2点です。

2-1.【返済方法の確認】元利均等返済ではないかのチェック

住宅ローンを繰り上げ返済する目的は、「ローン期間の短縮」と「総支払額の節減」です。

例として、ローンの残りが1,000万円あり、あと10年支払わなければならないことを条件とします。住宅ローンの借り換えをせず、固定金利3%のままであったとすると、

  • 1,000万円繰り上げ返済する=残りの10年は“自由”になれ、利息分160万円が節減できる

という効果が期待できます。しかしながら多くの方が利用しているとされる元利均等という支払い方は以下のようなイメージです(元利均等返済│住信SBIネット銀行)。

元利均等返済│住信SBIネット銀行

家を手にした頃に支払ってきた住宅ローンは、そのほとんどが利息で元金が減っていません。そして、子育て中・子を高校や大学に通わせている頃にやっと元金が減ってきて、リタイヤ前後で月々の支払額のほとんどが元金となってくる仕組みです。

つまり、多くの方が用いる元利均等において、総支払額の節減を最も感じられるのは、「住宅ローン支払い開始から早い時期に繰り上げ返済をする」ことです。もちろんリタイヤ前後で繰り上げ返済をし支払い期間を短くすることはできますが、そのほとんどが「元金」であることに注意を払いましょう。

上記の「利息分の節減」は住宅ローン支払い開始から早ければ早いほど効果を得られるものであり、完済に近づくほど総支払額低減効果は薄れていくことを覚えておいてください。それでも支払い期間を短くすべきかどうか、じっくりと検討していただきたいと思います。

しかしながら、自分自身の老後の生活を保つだけの預貯金を持ちながら、親御さんが亡くなりあてにしていなかった遺産相続が生じた場合、「一部繰り上げ返済(内入れ)」するとよいかもしれません。内入れとは、借入金の元金部分に充当する返済方法ですので、返済期間を短くする同時に、毎月の返済額を減らせる可能性があります。金融機関によっては取り扱いが異なりますので相談してみてください。

2-2.【要確認】団体信用生命保険(団信)契約や民間医療保険などのチェック

上記のように、元利均等での支払いは、住宅ローン“終盤”になった頃に元金が減少していきます。既に金利部分はほとんど支払い終えていますので、繰上げ返済してセーブできるのは元金部分の支払い期間ということになり、老後では総支払額の面ではあまり“得”を期待できないのが事実です。

一度支払ってしまったお金は戻ってくることはありません。しかしながら、住宅ローンの名義人となっている方が死亡ないしは所定の高度障害となったとき、その後の住宅ローンの支払いが免除される「団体信用生命保険(団信)」に加入してはいませんか。あまり考えたくないことではありますが、何がしかのときに家族に家という財産を残す方法として採用されるのがこの団体信用生命保険です。

この存在を理解しておけば、「老後に住宅ローンの繰上げ返済をする意義はあるのか」の判断基準がひとつふえるのではないでしょうか。しかしながら、所定の高度障害以外の病気やケガで住宅ローンの支払いが滞ってしまうリスクもあります。これに対しては、恐らく多くの方がかけているであろう民間の医療保険や、職場でかけている健康保険(社会保険の健康保険)で支給される傷病手当金、年金で住宅ローンの支払いをカバーすることとなります。

3.【持つべき視点】老後の暮らしでの「資金繰り」

老後の住宅ローン繰り上げ返済には、上に触れたような側面がありました。若い頃のように「支払い総額を減らしたい」「支払い期間を短くしたい」という視点とは別に、

  • 老後に使えるお金のキープ=資金繰りの感覚

という側面からも考えなくてはならないのです。これは、「経営者視点」と呼んでもよいでしょう。

確かに住宅ローンを繰り上げ返済し、住まいにかかる費用を「ほぼゼロ」にしたいところではありますが、一方で60代は他の世代と比較し

  • 保険医療費
  • 交際費

が増える傾向にあります。特に生活習慣病が発覚・悪化しやすい世代ですし、一旦それらの病気が見つかれば長い付き合いとなることは必至です。そうなれば、「受給できる年金以外に働いて収入を得よう」という計画が崩れてしまうかもしれません。そのようなときに頼りになるのが手持ちの預貯金です。

このようなとき、住宅ローンの繰上げ返済で預貯金が乏しくなっていれば、家の維持どころか自分自身の健康の維持さえ危うくなってしまいます。このような状況を避けるためにも、預貯金切り崩しによる資金繰り悪化のリスクを低減する視点を持たなければなりません。

「繰り上げ返済をしたばかりに貯金はゼロ、無理さえしなければ返済をしながら治療にも励めたのに」、という後悔をしていただきたくはありません。

また、ときとして「子どもが離婚をして孫を連れて帰ってきた」、「親の介護をしなければならない」状況に陥ったとき、統計で導き出された741万円で自身の老後をも支えることができるのか、じっくりと考えていただきたいと思います。

※老後の生活費については、以下の記事もご参考になさってください。

4.【予備案】家を手放す・リバースモーゲージを利用する

住宅ローンの繰上げ返済によって老後の暮らしが苦しくなる・破綻する位ならば、思い切って家を売却することも検討なさってはいかがでしょうか。上手に売却できれば住宅ローンの残債をカバーできますし、ときには高値が付いて少々の蓄えができるかもしれません。その後は、夫婦ふたり、ないしは一人暮らしにちょうど良い賃貸物件に住むのです。家賃こそ発生してしまいますが、固定資産税や家のメンテナンス費からは開放されます。

もしくは、リバースモーゲージの利用も検討してください。リバースモーゲージとは、自宅(土地+家、ないしはマンション)を担保にし、金融機関から融資を受けられる商品です。契約者が存命中は支払いはせず、自宅に住み続けることができます。住宅ローンからの借り換えであれば利息分だけを支払う必要がありますが、それでも月々の支払いを安く抑える方法としてメリットがあります。

しかしながら、推定相続人(子など)の同意を得なければならない、担保となる家の評価額が定期的に見直されることが考えどころとなります。また、リバースモーゲージを取り扱う金融機関によって、「土地と建物のみ(一戸建て)に限る」、「資金の用途は生活資金に限る」といった条件を付していることがありますので、まずは相談してみることをおすすめします。

※老後資金で困窮してしまいそうなときの“切り抜け方”については、以下の記事もご参考になさってください。

まとめ

老後資金から住宅ローンを支払い続けるのは、とても“重み”のあることです。そのため、月々の出費を抑制するために繰り上げ返済をすべきかどうか悩んでいる方もいらっしゃるはずです。しかしながら、住宅ローンの繰上げ返済をするためにはまとまったお金が必要であることも事実です。

手持ちの預貯金を切り崩してまで繰り上げ返済をするのがよいのか、それともそのまま支払い続けるのが賢いのかは、条件により異なります。今回の記事でお伝えした中で、特に覚えておいていただきたいのは以下の5つのポイントです。

  1. 総務省の調査では、60代以上・二人以上世帯の貯蓄は1,551万円、負債は810万円。自由に使えるお金は「741万円」、この金額で老後に生じる様々なことに対処しなければならない
  2. 手持ちのお金と預貯金とのバランスをシミュレーション。銀行サイトや繰上げ返済に特化したスマホアプリなどを用い、老後のお金をイメージしてみることが第一歩
  3. 住宅ローンの繰上げ返済にはふたつのチェックポイントがある。元利均等返済であれば老後の繰上げ返済は“不利”、ときに団体信用生命保険がカバーしてくれることも
  4. あてにしていないお金が入ったら、「一部繰り上げ返済(内入れ)」を。元金部分に充当されるので、返済期間の短縮・月々の支払額の減額が見込める
  5. いくつかの手を打っても生活そのものが苦しくなると予見できたら、家を売る・リバースモーゲージの利用も検討。身軽になるのも老後生活には大切なひとつの側面

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